もしも財布を拾ったら
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
「ど、どちら様で…?」
と俺が聞くと、ヒゲが
「申し遅れましてすいません。私共はこういう者です。」
そう言って俺にヒゲとメガネは名刺を渡してきた。
名刺には「〇〇社会動向研究所 研究室主任」という肩書とヒゲの名前があった。メガネの肩書は「研究員」だった。
(警察じゃないんだ…。良かった。)
「立ち話もなんですから、部屋に入れていただくか、近所の喫茶店にでも行きませんか。」
俺の部屋は散らかっているのと、時間には余裕があったから、喫茶店を選んだ。
何となく後ろめたい気持ちが大きかったから、何となく逆らえなかった。
来た道を戻るように3人で歩いて、さっきの自販機の前を通ったが財布はもう無かった。
メガネがその先のコイン駐車場に行って車を出すと
「どうぞお乗りください」
ヒゲに誘われるまま後ろの席に乗ると、隣にヒゲが乗り込んだ。
車が走り出して2~3分経ったが、近くに喫茶店なんてあったっけ?と思っていると
「申し訳ありません、これを付けていただいていいですか。」
ヒゲが目隠しを俺に渡した。
「すいません、喫茶店には行きません。ここからの道のりは秘密にしたいのです。」
「と言うと?」
「名刺にある研究所のいくつかある分所といいますか、とある事務所へ行ってもらいます。」
「どういう事ですか?」
ヒゲは俺の質問に答えないまま
「さあ、目隠しを。」
有無を言わせないようなヒゲの言い方で、俺は言われるまま目隠しをした。
車は左折右折を繰り返し、方向が分からないように進んでいた。
20分、いや30分くらい経った頃だろうか、車は止まった。
俺は目隠しをしたままヒゲに連れられて階段を上り、マンションか何かの部屋へと入った。
「それはもう外していいですよ。」
ヒゲが言う通り、目隠しを外した。
「ここへどうぞ。」
メガネが手招きをした先には、ごく普通のマンションの1室で、テーブルとソファが置いてあった。
最後草
面白かった。