奇々怪々 お知らせ

不思議体験

とるさんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

予知能力
短編 2025/01/29 14:49 480view

昔勤めていた会社に、Aさんという上司がいた。
Aさんは何かが起こること(災害や人の死など)を予知する能力を持っていた。
超能力に憧れを抱いていた俺は、Aさんとふたりで飲みに行った時に
「いつからそんな力があったんですか?」
と聞いてみた。するとAさんは
「これは罰なんだよ」
と寂しそうに笑い、長くなるけどいいか?と前置きしてから話してくれた。

Aさんには、双子の弟がいた。
Aさんと弟はとても仲が良く、いつも一緒に遊んでいたという。
顔も好きな食べ物も好きな遊びも一緒。

しかしひとつだけ違ったのが、なぜか弟には予知能力があったこと。
弟は親戚の死や近くの交差点での事故、どこどこの店が◯年以内に潰れる、どこどこに新しい店ができるなど、近隣で起こるあらゆる出来事を予知していた。
その能力をAさんは誇りに思っていたようだが、ご両親や祖父母は「気味が悪い」と言った。
そのため弟は、予知の話をAさんにしかしなくなったのだという。

小学1年生になったある日、Aさんは些細なことで弟と喧嘩した。
謝ろうとする弟を突き放し「お前もう二度と話しかけてくんな!」と怒鳴った。
ちなみにこの時喧嘩になったのは、弟がAさんに
「僕たち二人はもうすぐ死ぬ。川で溺れて死ぬ」
と言ったのがきっかけらしい。
今までに弟の予言が外れたことはない。

Aさんはもうすぐ死ぬという事実に耐え切れず弟に八つ当たりしたのだった。

その後、Aさんの住む町に大雨が降った。
その雨は川を氾濫させ、一部の町が冠水した。
Aさんの家は高台にあり被害を免れたが、弟がどこにもいない。
Aさんは怖くなり外に探しに行こうとしたが親に止められた。
そして数時間後、氾濫した川に落ちた弟が変わり果てた姿で発見されたのだった。

弟の予言は半分当たった。
弟は本当に川で死んでしまった。しかし一緒に死ぬはずだったAさんは助かった。
Aさんは「あの時喧嘩したことが運命を分岐させたのでは」と思ったという。
喧嘩をしていなければ、Aさんは弟と一緒に外に出て一緒に流されていたのかもしれない。
しかしそれは考えてもどうしようもないことだった。
それ以上にAさんは、大切な片割れを失ったことに精神的なショックを受けていた。

1/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。