トイレの老婆
投稿者:yukina14 (1)
「今更じゃん」
そんな会話をして鼻で笑っていると、突然建物の何処からか「バタン!」と扉を強く締める様なけたたましい音が頭上から響き、あたし達はビクッと肩を震わせた。
「え、何?」
友達の声に反応してあたしも周囲を警戒すると、男の一人が「今の音、上からじゃね?」と天井を指さす。
確か、この建物は三階建だったかと廃墟に侵入する以前の記憶を思い起こし、あたし達は「もしかして他にも誰か来てるんじゃない?」と、幽霊よりも別のグループとの邂逅に警戒心を抱いた。
親しみやすいグループだったらいいけど、頭のイカれた奴だと嫌だななんて考えていると、男達が上の階に行ってみようと提案する。
あたしを含めて女性陣はちょっと抵抗感があったものの、やっぱり音の正体が気になったのか覗くだけ覗いて見ようと男性陣の提案に賛同した。
上の階に行く為、あたし達が廊下を進んでいると「バタン!」と同じ様な力加減で音が響く。
その音はあたし達が階段を上っている最中にも何度か鳴っていて、男友達が「マジで頭のおかしい人種だったりして」と半笑いであたし達を揶揄った。
あたしは最後尾にいるし逃げ足にも自信があるから別にいいけど。
そんな事を思いながら上階にやって来ると、下の階と同じ造りの廊下が伸びていて、ひたすら闇夜に包まれた道が続いていた。
バタン!バタン!
最初の時よりもテンポよく叩きつけられるドアの音が、まるであたし達を誘っているようだった。
廊下を進むとトイレの案内板があった。
男女に分かれたトイレの入口前に5人が突っ立っていれば、「バタン!バタン!バタン!」と音は更に強く早く音を奏でる。
正直、入り口前で立っているだけでその余波が飛んできそうな騒音だったけど、どうにも男子トイレと女子トイレのどっちから聞こえてくるのかがよく分からなかった。
トイレの入口は男女ともに正面に目隠しするような壁が造られていて、男女が背中合わせに迂回するような通路となっている。
男二人が入口に入って耳を澄ませるが、本当にどっちのトイレから聞こえてくるのか分からないと首を傾げていた。
「じゃあ、男女で分かれて確かめてみようぜ」
そんな中、男友達の一人が悪ガキの様な笑みを浮かべてそんな提案を持ち出した。
明らかにビビりなあたし達女性陣を怖がらせる魂胆が見え見えだったけど、流石にコイツに馬鹿にされるのは屈辱だと感じたあたしは「別にいいけど、あんたがビビって腰抜かしてる姿が見れないのは残念だわ」と天邪鬼な事を言った。
当の本人は幽霊とか信じていない人だから「はいはい」とニヤニヤしながらあしらって来たからちょっとムカついた。
そして、あたし達は再び男女に別れて、それぞれトイレの中へと進んでいく。
妙な異臭が漂う汚れたタイル張りの床の上を歩くのは、靴を履いているとは言え気分は良くない。
女子トイレの中は壁一面が鏡張りの洗面台が手前にあって、その奥に個室が四つ並んでいた。
バタン!
あたし達が恐る恐るトイレ内を観察していると、油断している時に再びあの音が鳴ったせいで「うひっ」と変な声が出た。
ただ、誰も音の出所が分からなかったのか、あたし達は「今のこっちのトイレから?」「分かんない」などと言い合い体を抱き寄せ合っている。
そして、あたし達は音の出所を確かめる為にライトを個室の方に向けて暫く待機していると、
バタン!バタン!バタン!
その後祟られる事がなかったのか?
後々なんもなければいいけど