選択しなかった側の記憶
投稿者:八尺マン (46)
短編
2022/07/09
17:20
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ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ
馬鹿げた話と思われるだろうけど・・・
つい最近まで、変な記憶が頭に浮かんでくることが頻繁にあったんだ
浮かんでくるのは大抵が休憩している時
仕事がひと段落してちょっと休むかって時とか
家の掃除が終わってこれで一息できるなーって時とか
そういうちょっとした時にふと浮かんでくる
で、その記憶ってのが、ありえない記憶なんだ
俺が母親を殺した記憶が浮かんでくるんだ
言っておくが、俺はそんなことはしていない
学生時代、マジで殺そうと思ったことはある
でも、やってない
母親は元気で実家にいる
だけど、時々、母親の頭をハンマーでぶん殴る記憶がありありと浮かんでくるんだ
蒸し暑い夏
毎日、辛く当たる母親についに俺はキレた
俺に背を向けてグチグチと文句を垂れる母親にゆっくり近づき、前々から用意していたハンマーをその頭に叩きつける
母親はギャアと悲鳴を上げて、その場に倒れこむ
俺は母親に馬乗りになって、何度も何度も頭をハンマーで叩きつける
やがて、母親は動かなくなる
そんな記憶だ
決して想像なんかじゃない
確かなリアルさがある記憶だ
ハンマーで頭を殴った時の手の感触も
むせかえるような血の臭いも
まるで滝のように全身を流れる汗の冷たさも
遠くで聞こえるセミの鳴き声さえも
ありありと思い出されるんだ
けど、それは実際にはなかったことだ
偽りの記憶だ
何度も言うが母親は健在だ
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