わらう女
投稿者:HOD (11)
翌日、問い合わせが始まるという時間になり、電話の前で待っていましたが、一向に電話が鳴りません。
1時間たっても鳴らないので、兄に、問い合わせゼロ、とメールしました。
すると、準備に携わっていた責任感からか、兄が一応電話してみる、と返信してくれました。
そして、すぐに私の携帯に電話がかかり、固定電話が繋がってない、かけてもコール音がしない、と
慌てた様子で言いました。
私も驚き、自分の携帯から塾の問い合わせ電話にかけましたが、つながりません。
兄がすぐに電話会社に連絡し、原因不明だけれど不通のようだ、という回答を得て、
電話業者が確認しにきました。
開通作業はきちんとしていたのに、なぜか電話が繋がらなかった、という旨の説明を受けました。
初日から、いや前日の姪っ子の行動から、思い返してみればトラブルの始まりでした。
電話回線は柳の木の近くにあり、そこを何度も業者の方が確認してくれました。
結局、問い合わせはなく、塾生が集まらないまま、塾はスタートすることになりました。
それでも、毎日開けていたら、誰かは来てくれるかもしれない、と信じていました。
その日から10日経ち、問い合わせ用の電話がなりました。
たまたまその日は兄が心配して見に来ていた日で、電話に出てくれました。
すると、電話口から大きな声が聞こえ、兄が謝罪した上で、塾とは無関係の車です、と言い
電話を切った兄が、車をどけろっていうクレームだった、と言います。
車?と思いました。私も兄もバスで駅から来ていたからです。
パッと上から見ると柳の木のところに車が停まっていました。
その日から私は自転車で塾まで行くことにしました。
駐輪場に停めていたのですが、今度は駐輪場に停めている自転車がいつも倒されたのです。
不思議なことに音がしませんでした。いつも誰かが私の自転車を倒すのに、その音がしない。
なんなんだろう、一体、と思っていました。ここで塾をするのを邪魔されているような感覚になりました。
トラブル続きの上に塾生はゼロ。
賃料が8万円であっても、出費だけが続く状況にだんだんと気持ちが沈んでいきました。
気の持ちようなのか、めまいや頭痛といった不調も出るようになりました。
ある日の晩、ふと柳の木が事務所スペースの窓から目に入りました。
柳の木なので、風で揺れます。ところが、どう見ても凪ではなく、強風の揺れ方をしていることに驚きました。ここまで揺れるの?何かに怒り逆立てたような紙の毛みたい、と鳥肌が立ちました。
その瞬間、なぜかその揺れた柳の木が、長い髪の女性のシルエットに見えたのです。
目を疑いました。
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