真昼の公園の影
投稿者:したださん (10)
私が以前の会社に勤めていた時に聞いた話です。
その会社には家族用の社員寮があるんですが、その社員寮の一画に公園があるんです。おそらく、社員の子どもが遊べるようにと作られたんだと思うんですが、私がいつ社員寮の前を通っても、その公園で遊んでる子どもは一人もいませんでした。
ある日、社員寮に住んでいる2人の子持ちの先輩の部屋を訪ねた時に、その公園をちらりと見てみると、なんと公園の入り口は鎖が何重にも巻かれて封鎖され、周囲には有刺鉄線が張り巡らされて、誰も入れないようにしてあったんです。そのことを先輩に告げると、先輩は少し顔を顰めて言いました。
「あの公園ね、出るんだよ」
「出るって?」
「幽霊っていうか、妖怪っていうか、その類のものが。しかも昼間限定で」
「いや、さっき見た限りなんにもいませんでしたけど…」
腑に落ちない表情をしている私に、先輩は教えてくれました。
「あの公園に、人が入ると出てくるんだよ。真っ黒い影が。っていうか、入った人の影そのものが、こう、出てくるらしいんだよ」
それは、特に子供を狙って出てくるのだ、と先輩は言いました。
そんなバカな、と思っていたのが顔に出たんでしょう、先輩は苦り切った表情で言いました。
「俺も嘘だって思ってたよ。でもさ、実際にあの公園には昼間誰も行かないし、年に何回かある公園清掃も影が出ない朝の5時くらいにやるし、その時も子どもは絶対に同伴させない。それに気づいたか?あの公園、街灯がないだろう?」
確かに、あの公園には一つも街灯がありませんでした。普通なら一つくらいはあるはずなのに。
「全部、影ができるのを防ぐためなんだよ。それに俺、見ちゃったんだよ」
「何をですか?」
「あの公園に、野良猫が入ったことがあったんだけど、入った瞬間に黒いのに覆われていなくなったのを」
それはもしかしたら見間違いかもしれない、と先輩は言いました。あの公園がどうしてそうなったのか、誰も謂れは知らない、とも。
「でもさ、みんなとにかくあの公園を避けてる。だから俺も避けてるし、子どもは絶対に近づけさせない」
お前も子どもが出来たらわかるよ、と先輩は親の顔をして言いました。
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