死を選んだ同級生
投稿者:偽美 (28)
短編
2022/06/29
18:24
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真っ暗で何も見えない中を懐中電灯を頼りに歩き回り、彼を探しました。
けれどどこにも見当たらなくて諦めかけたとき、ふと教室の中で物音が聞こえてきたんです。
誰かがいる! 私たちは急いで音の鳴った場所へ向かいました。
するとそこには、なんと彼がいたんです。
生きていた頃と同じように机に座って本を読んでいました。
私たちの姿を見つけると彼は驚いた顔をしていました。
まさかこんな時間に人がくるとは思わなかったんでしょうね。
でもすぐに表情を変えてこう言いました。
「君たち何してるの?」
そこで私たちは事情を説明しました。
彼は静かに話を聞いていたあと、
「どうして俺のことを探そうとするのさ?」
と言いました。
「あなたが自殺したっていう話を聞きまして……それで……」
私は答えながら、なんだか悪いことをしてしまった気分になりました。
せっかく亡くなった人のことを調べようとしているのに、本人にそれを知られてしまうだなんて……。
けれど彼は気を悪くした様子もなく、むしろ嬉しそうな顔を見せてくれました。
「そっかぁ……みんな俺のこと心配してくれてたんだね」
「えぇ……まあ……」
「ありがとう!」
彼は笑顔を浮かべて消えていきました。後でみんなに聞いても全員が彼がその場で消えていくところを見たと言っていました。
そうしてそれから彼のことを見たという話は聞かなくなりました。
成仏してくれていると良いのですが……。
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自分が死んだ後周りがどんな反応をするのか見てみたい気持ちは分かる。
↑確かに!