結婚式の心霊写真
投稿者:アマリリス (3)
感傷に浸る様に当時のデータをスクロールしていると、私は一枚の写真で指を止めた。
「なんで…!?」
そこには、半年前に削除した筈のE夫婦の顔が潰れた写真データが刻まれいる。
どうして削除した筈のデータがそこに残っているのかは分からない。
ただ、私は焦りから再びデータを削除し、今度はしっかり消えている事を確認してスマホを放り投げた。
ただの偶然だ。
E夫婦の顔が潰れた写真が撮れたのも、Eの旦那さんが交通事故に遭い顔が潰れたというのも、スマホ内に消した筈のデータが復活していたのも、全て私の勘違いか偶然の重なり合いに過ぎない。
私は頭を抱えてベッドの隅に縮こまると、気絶するように眠った。
Eの旦那の訃報を受けて凡そ三ヵ月後。
私はスマホを買い替えてすっかり元の日常を取り戻していた。
Eは気の毒だが私に出来る事は相談に乗る事や一緒に遊んで気晴らしに付き合う事しかない。
友達と話し合った結果、それが私達が導き出したEに出来る最大限の手助けだ。
その甲斐もあってか、Eはそこそこ普通に振る舞えるようには回復し、時折笑えるようにもなった。
私達はEが少しづつ元気になっていく様子を見ても何処か無理をしているんじゃないかと疑ったものだが、その答えを知る術はない。
しかし、私達の心配を余所にEは自殺した。
この所以前のEの様に元気そうに見えていたが虚栄だったようだ。
EはKさんと暮らしていたマンションのベランダから飛び降りた。
ただ、Eの遺体は地面に着地する直前に駐輪場の屋根の梁に接触してワンクッションを置いた為か、顔面が陥没したように潰れていたと聞く。
私はその話を聞いて戦慄する。
Kさんに続いてEまでもが顔を潰して亡くなってしまったのだ。
私はすこぶる体調が悪くなりふらつくと、訃報を知った当時は早退して自宅に戻った。
自宅に戻ると徐に机の引き出しを開け、機種変更前のスマホ、つまり結婚式で撮影に使った当時のスマホを取り出す。
充電ケーブルに繋いで電源を入れると問題なく画面が立ち上がり、手慣れた様にデータファイルを操作していく。
お願いだ。消えていてくれ。
祈るように唇を噛んでいたが、私はファイルを開くと同時に絶望した。
「…嘘でしょ」
やっぱりそこには削除した筈のデータが残っている。
E夫婦の顔面が刻まれて押し潰された、到底結婚式には不釣り合いな一枚の写真。
しかし、何か違和感がある。
写真にはE夫婦の他に列席者が何名か写っており、中には私の友達も見切れているのだが。
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