結婚式の心霊写真
投稿者:アマリリス (3)
一瞬心霊写真なのではと思いはしたが、デジタル化が進んだこの時代にそんな非科学的な事を信じる訳もない。
そりゃあ写真自体は不気味で怖かったが、どうせ機械トラブルの末に偶然生まれた奇跡の一枚だったのだろう。
私は幽霊の類を信じていなかったのと、オカルト全般が苦手な事もあり、写真の事は忘れる事にした。
そのほうがいい。
もし「結婚式の写真に心霊写真が撮れた」なんて言ったらいくらEでも怒るだろうし、わざわざ嫌われる理由を作る必要もないのだ。
そして、友達の結婚式という新たな門出の祝いはあっという間に終わり、半年が経った頃だろうか。
再び仕事漬けの変わり映えのない日常を送っていると、突然Eから連絡入った。
私は仕事中だった為、終業後に折り返し電話をしてみる。
「もしもし、E?ごめんね、今仕事終わったところ」
久しぶりにEと話せたせいか何気なく明るく声を弾ませていると、電話越しにEのすすり泣く声が聞こえた。
私はすぐにEに何かあったのだと気づき、声を低くして投げかける。
「どうしたの?何かあったの?」
『K君が、死んじゃった……』
押し殺すように絞り出したEの告白に、雷に打たれたように私は呆然となった。
なぜなら私は結婚式で撮影したあの写真、私が当日に削除したE夫婦の顔が潰れた、あの写真の事を思い出してしまったからだ。
「え?嘘でしょ?」
『……交通事故で、正面衝突して』
Eの旦那さんは仕事帰りに運悪く交通事故にあったらしく、即死だったそうだ。
Eの過呼吸のように泣きじゃくる嗚咽が私の胸の内を抉るように響く。
「…そんな」
『それでね、警察の人から連絡来て、すぐに行ったんだけど、顔が…ぐちゃぐちゃだから見ない方がいいって…』
Eの言葉を受けて、私は続けざまに言葉にならない感情が蠢いた。
結婚式で撮影したあの一枚の写真も確か顔が酷く潰れていた事を思い出す。
そして現実ではEの旦那さんは交通事故に遭い、あの写真と同じ様に顔がぐちゃぐちゃになった。
いや、実際にはEの証言だけで見てはいない為、旦那さんが写真の様になったかどうかは定かではない。
私は暫くEを励ますと、Eが落ち着くまでただ只管Eの話を聞いてあげる事しかできなかった。
Eとの電話を終えた後、私は何気なしにスマホ内のデータを遡る。
半年前に撮影したEの結婚式のデータ。
その挙式の動画を再生すると仲睦まじい二人の姿が記憶されている。
こんなに幸せそうな顔をした旦那さんが亡くなったのか。
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