死体の肉を削ぐ女性
投稿者:せいぎ (10)
これは、日本のある地方で、実際に行われている風習に纏わる話です。
その地方では、死んだ人間は火葬されず、肉体を維持したままの形で、土中に埋葬されることになります。
そして、半年ほどの時間を置いた後に、腐乱した死体を掘り返し、骨に残った死肉を削いで埋め直すのです。
その作業を行って良いのは、死んだ人間の身内、しかも女だけという風習が根付いています。
私がこれまでの人生で関わった女性の中に、1人だけ、この風習を持つ地方の出身者がいました。
暗い雰囲気の女性で、普段からほとんど話もせず、どこを見ているかもわからないような虚ろな表情をしていました。
仕事上の関わりだったのですが、彼女と2人で過ごす時間は辛く、異様に重い雰囲気に押し潰されそうになることもありました。
そしてある時、彼女は身内の不幸を理由に仕事を辞めることになりました。
その時、彼女は見開いた目から涙を流し、こう言ったそうです。「これでもう、肉を削げる身内もいない」と。
私や周りの人間が、彼女の出身地の風習を知ったのは、彼女が職場を去ってから随分と経ってからのことでした。
唯一彼女と親しかった女性の話によれば、彼女は若いうちに両親を亡くし、夫と、2人の子供も事故で失ったとのことでした。
そして、その地方に生まれた彼女は、愛する人を失うたびに、彼らの死体を掘り起こし、骨に残った肉を刃物で削いでいたのでしょう。
一体、彼女がどのような気持ちだったのか。常に虚ろな目の奥に、どんな光景が焼き付いていたのか、想像するだけで胸が押し潰されそうです。
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