くだんの狂気
投稿者:コオリノ (3)
「くだんか……?」
不意に、爺ちゃんから弱々しい声が響いた。
「う、うん……俺調べたんだ……あれ、ヤバいやつなんだろ?災害とか予言するとか……まだ信じられないけど……けどこうなった今じゃ信じねえわけにいかないだろ!」
「だとしても!」
爺ちゃんの怒声のような声に、俺は思わず肩を震わせ怯んでしまった。
「だとしてもだ……俺はここで育ったんだ……こいつらと……ずっと一緒にな……ここしか知らねえ……ここだけなんだ……」
そう言って牛舎の牛達を見回し、爺ちゃんは深く肩を落とした。
その瞬間、
──ガタガタガタガタッ
余震だ。
咄嗟に爺ちゃんに覆いかぶさり、俺達はその場にうずくまった。
牛達のけたたましい鳴き声、建物が激しく軋み、周辺のものが辺りに散乱し大きな音を立てている。
揺れが三十秒ほど続いたが、必須に歯を食いしばっていた俺には、それが何時間にも感じられた。
「止まった……のか?」
顔を上げると、唖然とした爺ちゃんと目が合った。
「た、立てるか?」
「う、うん」
爺ちゃんに言われ、俺は差し出された手を取り立ち上がった。
だが次の瞬間、
「にげえ……にげっていっだ、言っだのにィィい、なんでにげっ……にげ……ない……じねよ……じねよ……じねじねじね死ね死ねぇぇ!!」
おぞましく禍々しい雄叫び。
声に振り向くと、一頭の牛の股にあの……。
「く、くく、くだん……!?」
「うわぁぁっ!」
爺ちゃんがくだんの名を口にした瞬間、俺は叫び声を挙げながらその場で尻もちを着いた。
白い煙がじゅうじゅうと音を立て舞い上がる。
あの歪なくだんの姿が、前の時と同じようにして、地面に吸い込まれるようにして掻き消えていった。
その後、疲れ果てた俺達が家に戻ると、母さん達が車の中で俺たちを待ってくれていた。
結局、誰もその場から逃げなかったようだ。
むちゃくちゃ怖い。過去一の怖い話かもしれない・・・
件とにた妖怪で「禍(か)」と言うのが居るらしい
こっちは予言ではなく、土砂崩れ等災害が起こる地域で直前に現れるとか
面白かった!
たまに目撃されるって言うけどいつも災害の後に話題になりますよね
書くのうますぎ。読みやすくてすごく怖かったし面白かった
くだんは伝承の中でも真実味が高いと自分は思っています。
くだんって爺ちゃん達恨んでたん?