くだんの狂気
投稿者:コオリノ (3)
長編
2022/04/04
00:52
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しばらくして役所の人間から避難を呼びかけられ、俺達家族は街の体育館へと誘導された。
避難所には知った顔の人達が、俺達を温かく出迎えてくれた。
安田さんも含め、結局他の人達も誰一人逃げようとしなかったらしい。
老体というのもあるだろうが、やはり皆うちの爺ちゃんと同じ思いだったのかもしれない。
そして安田さんからは、こんな話を聞かされた。
「ここに来る途中な、役所の人に聞いたんだが、あの展望台、崖崩れでめちゃくちゃになっとるらしいぞ…」
「が、崖崩れ!?」
「ああ……元々地盤が弱っとったせいもあるらしいが、もしあそこに逃げとったら今頃……」
ゴクリと、俺は喉を鳴らしながら立ち尽くし、やがて支えきれなくなった震える足を、その場で崩しへたへたと座り込んでしまった。
以上が、俺が昔、爺ちゃんと暮らしていた時の話になる。
残念ながらあの後、俺は酪農業を継ぐのをやめ、会社勤めを始めた。
爺ちゃんも二年前に亡くなり、酪農業は廃業となった。
今は婆ちゃんと母さん、そして妹と、家族四人で暮らしている。
あのまま酪農業を続けるという道もあったが、今の俺には、その勇気はない。
あれが……おそらく、くだんではないあれが、一体何だったのか分かる日が来るまで……。
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むちゃくちゃ怖い。過去一の怖い話かもしれない・・・
件とにた妖怪で「禍(か)」と言うのが居るらしい
こっちは予言ではなく、土砂崩れ等災害が起こる地域で直前に現れるとか
面白かった!
たまに目撃されるって言うけどいつも災害の後に話題になりますよね
書くのうますぎ。読みやすくてすごく怖かったし面白かった
くだんは伝承の中でも真実味が高いと自分は思っています。
くだんって爺ちゃん達恨んでたん?