真夜中の訪問者
投稿者:邪神 白猫 (7)
こんな時でさえ妙に冷静な考えが頭を過ぎった私は、通話ボタンを閉じると携帯を握りしめた。
(お願い……っ。悪い夢なら、早く覚めて……)
一人でこの状況に耐えるという選択をした私は、ベッドの中でカタカタと震えながらひたすらに祈った。
その後、あの騒音が再び鳴り響くことはなかったが、その日は一睡もできずに夜を明かしたのだった。
※※※
「本当にありがとう、里美」
「気にしなくて大丈夫だって。澪の家からの方が通勤も楽だし。むしろ、助かっちゃうくらいだから。……それより、ちゃんと寝た方がいいよ?」
「うん……」
あれから一週間。
毎日決まって2時23分に鳴り響く音に悩まされ続け、夜も眠れぬ日々を過ごしていた私。
そんな状況を見かねた同期の里美は、幽霊がいるだなんて戯言を信じてくれたばかりか、こうして心配して泊まりに来てくれたのだ。
勿論、引っ越すことも考えてはいるが、今すぐにどうこうできる状況でもなかった。なにせ、連日の残業やら休日出勤やらで、物件を見に行く暇さえないのだ。
実家に身を寄せることも考えたが、勤務先まで片道三時間もかかってしまうことを考えると、どうしてもその決断はできなかった。
「じゃあ……明日も早いし、もう寝よっか。……おやすみ」
「うん。……本当にありがとう。おやすみ」
今一度お礼を告げると、里美はクスリと笑って瞼を閉じた。
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意外なオチで面白かったです
泣けた