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心霊

邪神 白猫さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

真夜中の訪問者
長編 2022/04/01 13:15 6,739view
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「壁じゃ、ない……」

 間違いなく、その音は玄関の方から聞こえたのだ。

 これが日中の話しなら、煩い音に顔をしかめるだけで済んだのかもしれない。けれど、今の時刻は真夜中の2時過ぎなのだ。
 私には、こんな時間に訪ねてくるような知人に心当たりはない。とすれば、まず真っ先に浮かんだのは強盗だった。

 けれど、よくよく考えてみれば、強盗がわざわざ音を出してそこにいる住人を叩き起こすわけがない。

(もしかして……、隣の人?)

 そう考えてみても、面識のない人が夜中に急に訪ねてくるなんてことは非常識すぎる。百歩譲って、チャイムを鳴らすでもなく騒音を立てたことを許したとしても、やはり恐怖の対象であることには変わりない。

 意を決して立ち上がった私は、静まり返った玄関へとゆっくりと歩み寄った。
 モニターでも付いていれば良かったのだが、古すぎる物件には生憎とそんなハイテク技術は備わっていない。

 私はそっと玄関扉に手を着くと、覗き穴から外の様子を伺った。

「……誰もいない」

 小さくポツリと呟いた——その時。

 ———ドンドンドンドンドン!!
 

「ヒ……ッ!!」

 再び大きく鳴り響いたその音に驚き、私はドスリとその場に尻もちをついた。
 確かに誰も居ないと確認したばかりだというのに、覗いていた扉が激しく叩かれたのだ。

 私はガクガクと震える身体で懸命に室内を這いずると、まだ微かな温もりの残っているベッドへと戻ると頭から布団を被った。
 震える身体で携帯を開くと、助けを求めようと通話ボタンを開く。けれど、一体どこへ掛ければいいのだろうか……? 

 警察に掛けたとして、一体何て説明をすればいいのかわからなかった。
 はたして、幽霊がいるので助けてくれと言って、それで来てくれるのだろうか?
 かと言って、こんな時間に同僚や友達に電話をかけるなんて非常識すぎる。ましてや、幽霊がいるから助けてくれだなんて……そんな、にわかには信じがたい理由で。

2/7
コメント(2)
  • 意外なオチで面白かったです

    2022/04/01/16:55
  • 泣けた

    2022/04/01/21:43

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