土壁の老いた男性
投稿者:pams (61)
短編
2022/03/14
02:33
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私が幼い頃、借家に住んでいました。
2階建てでかなり古くトイレも暗く汲み取り式。トイレに行くのがとても怖かったのを覚えています。
そんな家だったので、今まで住んでいた人の魂が浮遊しているのでしょうか、よく不思議な現象に遭遇していました。
その中でも強烈に覚えているのが廊下の土壁に出現した人の顔。
これは、急に出てきたのではなく徐々に徐々に浮き出てきました。シミのような感じでで色が濃くなりいき、最初は何とも思っていませんでした、数年かけて年老いた男性の顔になりつつありました。
怖いという感じよりもその時は不思議さの方が強かったです。
私には何とも言えない寂しそうな表情にも見え、時には怒っている表情にも見える時もありました。
子どもながらに何だか切なくかわいそうな感情になり、その土壁をよく眺めていました。
少しずつ土がポロポロと落ち剥がれていく様はこの年老いた男性が消えてなくなっていくようでした。
その数年後、あの家は壊されて大きなマンションが建設されましたが、今大人になりこうして考えてみると、あの年老いた男性はあの家に深く関係がある人だったのかなと思います。
何か訴えたいことや叶えたい事があったのかもしれません。
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