お見舞い
投稿者:pams (61)
叔父が入院したと聞いたのは夏前のことでした。
親戚の中でも特に私達姉妹をかわいがってくれた叔父さん。突然のことで戸惑いました。詳しく聞くとあまり長くないかもしれないということで更に気持ちが沈みました。
翌日は午後から仕事を休み、隣県の入院先の病院へお見舞いに。
出発した矢先、以前叔父さんが元気だった頃にお土産として持って行った南瓜パイを持っていこうと思いたち、売っている甘味処のお店へ寄って行きました。
迷路のような病院内を、数人の看護師さんに道を聞きながら進み、ようやく部屋へ辿り着きました。
明るく挨拶しようと思いドアを開けると聞いていた以上に顔色が悪く、体がやせ細って元気な頃の姿は見る影もありません。
食べられない事はひと目で分かりましたが「南瓜パイ持って来たよ!」と言うと目を細めて口を僅かに動かしました。
そのまま寝てしまったので、その日は話もできず叔父の家に泊まり、翌日行ってみるとまだ寝ていました。
でも昨日病室に置いて帰った南瓜パイが2つ減っていたので不思議に思っていると、看護師さんが部屋に入ってきて「今朝朝食は食べなかったんですが、このお菓子を嬉しそうに一生懸命食べていました。先程また寝たんです。」と教えてくれて嬉しかったです。
起こしてはいけないと思い帰宅したのですが、その夜、叔父は息を引き取りました。急なあまり、悲しみに浸る余裕さえなく、叔母と共に通夜と葬儀の手配で精一杯。あっという間に火葬へ。
すると棺桶に叔母が南瓜パイを一つ入れてくれました。
火葬が終わると担当の方が二人、小声で話しています。するとこちらに気付いて「あの、中に入っていたお菓子が…なぜか焼けていなくてですね…」と言われ何の事か分からずに見てみると、叔父の骨の横に個包装のままのパイがそのままあるのです。
それを見て一族全員、「灰にならなかったってことは今頃あっちで食べてるんだね」と言って笑い合いました。こんなことがあるんだなと不思議な体験でした。
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