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ヒトコワ

キミ・ナンヤネンさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

開発部整理課
短編 2021/01/20 01:10 6,021view

僕はある大手総合電機メーカーに勤めている。
ある日、開発部の基礎研究課から「整理課」という部署に異動になった。

基礎研究課では、僕のような新人はメーカーや下請けとの連絡や納品などが主な仕事だったが、僕は失敗続きだった。
それを見かねた人事部は、再教育目的で僕を異動させたのだ。
整理課には僕と先輩の二人しかいない。課長は他の課と兼任していて、めったにこの部屋に来ることはない。

整理課の仕事は主に二つある。
一つは、様々な書類のファイリングや図面の管理だ。
もう一つは、開発部あてにかかってきた電話を一度ここで受け取り、その担当者に回すという仕事だ。
ここでしっかり仕事を覚えれば、基礎研究課へ戻ってもきっとうまく仕事ができるようになるだろう。

ここでは電話を受けるのが仕事だから、当然朝から電話がバンバン掛かってくる。

取引先はもちろんの事、顧客とのやりとり、問い合わせ、クレームなんかもある。
その中で非通知の電話が掛かってきた。それ自体は珍しくないが、取ってみると男の声で

「しばらく休ませてください」

とだけ言って切れた。その事を向かいの席の先輩に伝えると、
「ああ、それ俺にもあったよ。すぐ慣れるから気にすんな。」
と言っただけだった。
誰かの欠席の連絡だとは思うが、何かの間違いだろう。僕と先輩の二人しかいない部署にそんな連絡はありえない。
その日はそれで終わった。

次の日も、その電話が掛かってきた。やはり「しばらく休ませてください」と。
結局その日は、その電話は2本あった。

それからというもの、その電話は毎日掛かってくるようになった。
当初は、電話の登録を間違えてるのかと思ったが、こうも連日だとそれも違うだろう。
しかし、会社の方針なのか、電話機の仕様なのか、着信拒否の設定にはできなかった。

そんな日が2週間以上続いていた。
例の電話は、最近は1日に少ない時でも10本、多い時だと20本以上掛かってくる。
しかも掛かってくる時間が不規則だから、当然他の仕事にも影響が出てくる。
そうなると、さすがに精神的に参ってくる。
精神的に参ってくるとミスが出る。ミスが出ると精神的に参ってくる。この悪循環だ。

これは後で分かった事だが、整理課の電話番号は実は3つある。
1つ目は整理課の代表番号で、全ての外線はここに掛かってきていた。
2つ目が先輩への直通、3つ目が僕への直通だ。つまり、例の電話は全て僕への電話だった。

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関連タグ: #声#電話#非通知
コメント(2)
  • 最後の1行を少し変えました。言っている意味は同じです。

    2021/01/21/22:07
  • 所謂リストラ部屋ってやつかな?

    2021/04/10/12:47

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