小学生の頃の話です。
当時私は毎日夕暮れまで校庭に居残り遊んでいました。
しかし友達が塾だの門限だので一人また一人帰ってしまうのを見送るうちに、どうにも心細くなってきます。
自分以外誰もいないだだっ広い校庭に立ち尽くし、一人ボールを追いかけていた時でした。
「あれっ?」
強く蹴った拍子にころころ転がっていったボールが突然消えました。
びっくりして注意深く歩み寄ると、校庭の片隅に半径50センチほどの穴が開いています。底は真っ暗で何も見えません。
「誰が掘ったんだ……学校の子のいたずらか?」
まるで心当たりがなく、好奇心に駆られて覗き込んだ時、穴の奥から変な匂いが漂ってきました。
煙たさに顔をしかめてあとずされば、ウオオオ、アアアァ、と恐ろしい呻き声が被さります。
穴の底に得体の知れない者が潜んで、私を引きずり込もうとしている……。
凄まじい恐怖に駆り立てられて家に逃げ帰り、この日の事は誰にも言わず大人になりました。
随分後になってから、あの日嗅いだ匂いは線香の匂いだと思い当たりました。
後日校庭を隅々まで検めてみましたがどこにも穴は存在せず、あの体験が何だったのか今でもわかりません。
あれは地獄の入り口だったのでしょうか。
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