トンネルから出られない
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/02/17
18:23
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数年前、友人たちと肝試し中に起きた出来事です。
若気の至りとは恐ろしいもので、その夜酔った勢いに任せて私たちが向かったのは日本有数の心霊スポットと名高い峠のトンネルでした。
運転席に私、助手席にA、後部シートにBとCが座りいざトンネルに突入したものの、期待していたような心霊現象は全く起きません。
「やっぱでたらめだったか」
「だな」
拍子抜けしてスピードを上げ……しかしどれだけ行っても出口が近付いてきません。
「おかしいな」
遥か彼方に明かりが見えているにもかかわらず、先ほどからその距離が一切縮んでない現実にパニックを起こしました。
同乗する友人たちもさすがにおかしいと騒ぎだし、狭い車内は阿鼻叫喚の地獄絵図を呈します。
五分、十分、十五分……デジタル時計が無慈悲なカウントダウンを続ける中、気も狂いそうな恐怖に駆り立てられ叫びました。
「俺たちが悪かった、ここから出してくれえっ!」
直後にドンッと鈍い音がし、車の天井が大きく弾みました。何かが降ってきたのです。
以降の記憶は曖昧で、一時間後に漸く脱出に成功しました。
「さっきの音はなんだったんだ?」
頭を冷やしてから車を点検し、天井にくっきり付いた裸足の足跡にびっくりしました。
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