「しー」
投稿者:上龍 (34)
私がまだ小学生の頃の話です。
当時私の友人にAとBがいました。Aは金持ちの息子で親におねだりすれば何でもすぐ買ってもらえる恵まれた環境で育ちましたが、Bは貧乏な母子家庭で育ち生活保護をもらっています。
ある時Aが新しいペットを飼ったと自慢してきました。それはハムスターで、とても人懐こくて可愛いのだそうです。うちに見に来ないかと誘われ私とBはAの家にお邪魔しました。
優しく美人なAのお母さんにジュースとお菓子をごちそうになり、しばらくはハムスターと戯れ楽しいひとときを過ごしました。
ところが帰り際に事件が起こりました。Aが可愛がっていたハムスターがいなくなってしまったのです。
「ケージの鍵ちゃんと閉めたのに」
「脱走したんじゃないか?隙間にもぐりこんだとか」
三人で手分けして捜しましたが結局ハムスターは見付からず、Aは大変落ち込んでいました。
「A、がっかりしてたな。可哀想に」
「うん」
帰り道、Aに同情する私の隣でBは上の空でした。何故かしきりとズボンのポケットをまさぐっています。気になって目をやると、Bはガシャポンのカプセルをいじくっていたのです。
「あ!」
思わず声を上げてしまいました。Bが持っていたガシャポンの中にハムスターが詰め込まれていたのです。
すぐ引っ込めてしまったので生死は定かではありませんが……あんな狭いカプセルに閉じ込められていては、どのみち窒息は免れません。
「しー」
恐怖と驚愕で立ち竦む私の方へにこやかに向き直り、Bは唇の前に人さし指を立てました。
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