廃墟の黒電話
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/02/11
22:48
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小学生の時の話です。
当時近所に幽霊がでると噂の空き家があり、悪ガキどもがしばしば忍び込んで遊んでいました。
私も例外ではなく、友達と一緒に廃墟に入って探検ごっこをしました。しかし残念ながら幽霊はおらず、がっかりした矢先に黒電話を見付けました。
私が子どもの頃には既に携帯やプッシュホンが主流になっており、黒電話など見たことがなかったので興奮しました。
しばらくは友達と交互にダイヤルを回し、受話器を耳に押し当てるなどしてふざけていたのですが……。
何回目かでダイヤルを回した時、受話器の奥にノイズが走って男の人の声が囁きました。
しかしくぐもっていてよく聞き取れず、息を殺して集中します。
「早く逃げろ……」
「えっ?」
物騒な警告に思わず聞き返すも、それきり電話は切れてしまいました。私と友人は気味が悪くなり、そそくさと廃墟を後にしました。
後日、四十年前にあの家で起きた事件を知りました。
四十年前、あの家には両親と小学生の息子の一家が住んでいました。しかし父親がヤクザに関わり拉致監禁され、遂には妻子までさらわれてしまったそうです。
以来、一家の行方はわかっていません。
私が聞いた男の声は、見張りの隙を突いて父親がかけてきたものだったのでしょうか。
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