私の母は出産時に死亡し、以降は祖母のもとで育てられました。その祖母もまた私が高校生の時に病気に倒れ、長い入院を余儀なくされます。
臨終の間際、祖母に手縫いのお守り袋を渡されました。
「もしあんたがどうしても許せなくて死んでほしい人が現れたら、これに願をかけなさい。中は絶対に見ちゃだめ」
以後、祖母の形見のお守り袋を肌身離さず持ち歩きました。
やがて私はブラック企業に就職し、上司のパワハラとセクハラで心を病み、退職寸前にまで追い込まれます。
その時ふと脳裏を過ぎったのが、死に際の祖母に託されたお守りの存在でした。
いちかばちか祖母の遺言を信じてお守りに願を掛けた翌日、出勤途中の上司が駅のホームから身を投げました。
死ぬほど憎い上司がいなくなった!
最初こそ狂喜したものの、葬式の席で奥さんとまだ小さい娘さんが号泣する光景を目の当たりにし、否応なく罪悪感が疼きました。
二度とこんな過ちを犯してはいけないと反省した私は、近くのお寺にお守りを持ち込み、理由を話して処分を依頼しました。
すると住職はとても怖い顔をし、私の目の前でお守り袋を開いて逆さに振りました。
「あっ!」
中から出てきたのは薄紙をくり抜いた人形(ひとがた)で、丸い顔の部分に私の写真が貼られています。
しかも人形の右足の部分だけ黒く染まっていました。
「お婆さんは娘の命を奪って産まれてきた君を呪ってたんだ」
住職曰く、私が呪った人間が一人命を落とすごと人形に瘴気が吸収されてゆき、真っ黒に染まりきると同時に非業の死を遂げるのだそうです。
その死は私が憎んだ人々とは比べ物にならない苦痛に満ちたものになるだろうとも予言しました。
以来、私は人間不信に陥ってます。
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