シーソーで決めましょう
投稿者:窓 (7)
これは先月体験した話です。
当時私は三歳になる息子を公園の砂場で遊ばせていました。
ベンチに腰掛けて文庫本を読んでいると、近所に住む主婦の吉田さんがやってきました。
吉田さんが連れているのは今年で三歳になる男の子と女の子の双子ちゃんで、とても可愛らしいです。
「こんにちは吉田さん。なんか痩せた?」
「こんにちは。ええ、ちょっとね……」
お互い知らない仲じゃなかったので、束の間他愛ない世間話をしました。主に育児や家事のストレス、共通のママ友の噂話や愚痴などです。
「やっぱり双子ちゃんの子育ては大変?」
「そうねえ。一人だったら楽かもね」
片隅のシーソーが空いたのを見計らい、吉田さんが子どもたちを手招きしました。子どもたちは無邪気な歓声を上げシーソーに飛び乗ります。
「実は一人旅の計画を立ててるんだ」
「いいね~気分転換。子どもたちはどうするの」
「一人は夫に預けて一人は連れていこうと思ってるの。じゃないと私も寂しいし」
「どっちを連れてくの?」
「シーソーで決めるわ」
子どもたちはぎっこんばっこんシーソーを漕ぎだしました。すると息子さんの方が少しだけ重いのか、シーソーが傾いで止まりました。
「決めたわ。重い子を抱っこして旅に出るのは大変だもの」
その後吉田さんは子どもたちの手を引いて帰っていき、二度と現れませんでした。
数日後、吉田さんは娘さんを道連れに心中しました。育児ノイローゼが原因でした。
うわあ…