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心霊

窓さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

笑う市松人形
短編 2022/02/18 21:31 978view
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うちには死んだ伯母から受け継いだ市松人形がありました。
普段はリビングの使われなくなったピアノの上にお座りしているのですが、夜トイレに起きた時に視界に入ると妙な雰囲気があって子供心にぞっとしたのを覚えています。

私が小学生の時の体験です。
その日は熱帯夜で寝苦しくて目が覚めました。トイレに立った帰りにリビングの横を通りかかると妙な視線を感じ、釣られて顔を上げました。視線の先には無表情な市松人形がいました。

ですがどこか様子がおかしいです。
よく観察し、違和感の出所を悟った瞬間に猛烈な寒気に襲われました。

「笑ってる……?」

市松人形の唇の端が吊り上がって暗闇の中で笑っているのです。

私はパニックに駆られて寝室に駆け戻り、今見た事を叩き起こした両親に報告しました。しかし二人とも信じてくれず、夢でも見たんだろうとあっさり片付けられてしまいました。

翌日、どうしても夢だと思えない私は半信半疑でリビングに赴き、ピアノの上の市松人形を手にとりました。

何故笑っていたのだろうと訝しんでひねくり回している時、甲高い女の子の声が脳裏に直接響いてきました。

「あと少し。もう少し」
「えっ」
「体をもらうね」

次の瞬間、目が合った市松人形が再び微笑みました。
私は思い出しました。この市松人形は10歳で死んだ伯母の娘の形見であり、自分は今9歳であること……。

あれから長い歳月が過ぎました。10歳の誕生日前後から私は謎の奇病にかかり、手足の関節が人形のように強張っています。

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