誰一人卒業できなかった第一期生

これは、私が友人Tから聞いた話です。

友人Tは子供のころ親の仕事の関係で2.3年に一度は転校しており、色々な学校を転々としていたそうです。
その為、中学3年生の時は、卒業の10か月前に転校してきたので、卒業式に取り立てて思い入れもなかったとのことでした。

その学校は当時まだ歴史が浅く、友人Ｔは第１２期卒業生に当たるそうです。
まだ新しくて綺麗な学校を友人Ｔは気に入っており、よく校内を散歩していたそうです。
そこで気が付いたことがあるとのこと。

卒業生から送られる贈答品、例えば掲示板なり、体育館の幕なり、そういったものには『第〇〇期卒業生寄贈品』と書かれていますが、第一期卒業生の寄贈品だけが見当たらなかったのだそうです。

少し気になったものの、自分が見つけられなかっただけかと思っていたのだけれども、なにか引っ掛かり、友人Ｔは同級生に質問したとのこと。
「第一期卒業生はいないんだよ」
「は？」

同級生の言葉に友人Ｔは首を傾げます。

「第一期卒業生は卒業式の前にいなくなっちゃったんだってて。だからいないんだって」
「いなくなったって、どうゆう意味？だって1人や2人じゃないでしょう？大勢いなくなるなんてある？」
「うーん…、私もよく分からないけど、そう聞いてるよ。それにね」
同級生は声を潜めて言いました。

「この話、ちゃんとした事を聞くとね、聞いた人も話した人もいなくなっちゃうらしいよ」
「は？」
同級生の言葉を聞いて、友人Tはそれ以上質問することをやめたとのこと。

しかし、翌日、その同級生は手紙をくれたのです。
その手紙には

『第一期卒業生は、卒業式日に全員で屋上から飛び降りたんだって。だから、卒業式の日に、屋上を見たらだめだよ』
と書かれていたそうです。

口に出してその話をしなければいいという事で手紙をくれたのでしょう。
そして友人Tは確かに話を『見た』のであって、『聞いて』はいない。
それでも信じがたい話だったそうです。

それでも友人Tは最終的にその話を信じたのだそう。
なぜかというと、卒業式、校舎をバックにしてとった写真の背景には、何かが落ちてくるようなものが写りこんでいたのだから。

消えた卒業生たちは、死後も卒業式の日になると、屋上から飛び降り続けているのでしょうか。
その話が本当の話なのか、からかわれただけなのか、友人Tはいまだにわからないといいます。
しかし、その写真がある限り、嘘の話とは思えないと話していました。