村を眺めている
投稿者:GENGO (32)
知人のAから聞いた話。
Aは喫茶店を経営している。
程よく繁盛しており、朝から夕方まで色々な常連さんが
お店を訪れてくれている。
静かに飲食をする人もいれば、マスターであるAや、
他の常連さんとの会話を楽しんでくれている人もいる。
そんな常連さんの1人にFさんがいた。
かなりご高齢の人で、近所に息子夫婦と同居されていた。
Fさんはときどき訪れてAと会話をしていた。
昔からこの町に住んでいたわけではなく、
もともとは隣県の山村で生まれ育ったそうだが、
村が廃村になり、息子夫婦が住むこの町の家で
同居する形になったそうだ。
幸い、息子夫婦との同居に問題は無いのだが、
そこそこの年齢になってからの転居でもあり、
周囲に知人が大勢いるわけでもなかった。
Aの喫茶店で、Aや他の常連さんと
仲良く会話できるようになって、
それがしみじみと嬉しかったらしい。
そしてFさんがある時期から、
「また同じ夢を見ちゃってさ」
とAに言うようになった。
Fさんが生まれ育った山村。
その村をFさんは眺めている。
ときどきFさん自身がユラユラと揺れて、
それにつれて村の眺めもゆれる。
そのままずっとFさんは懐かしい村を眺めている。
「やっぱり故郷が懐かしいんだろうな。
帰りたいとか自覚してはいないつもりなんだが。」
そんな事を言っていたFさんが、
きがつけばしばらく店に来なくなっていた。
Aが訝しく思い始めたころに、
「Fさんが行方不明になった」
という話が伝わってきた。
これは良い怪談
未来の自分を見ていたのなら悲しいな…
(作者様、最後の行で字が抜けてしまっているようです)
時々揺られながら。が良い味だしてる。