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呪い・祟り

キミ・ナンヤネンさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

猫に小判
長編 2021/06/18 02:03 8,907view
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僕の家系はこの城下町で代々この一帯の土地を守っている。
当時の社長である祖父の代になると不動産業で財を成したが、3年前にその祖父が亡くなった後は父が後を継いだ。
なぜかこの辺りではほとんどの家で猫を飼っていて、今では「猫の町」として知られている土地だ。

僕が今住んでいる家は近隣住民からはお屋敷と呼ばれるほどの大きさで、日本庭園や蔵まである。
おまけに、家の一番奥の和室には戦前に作られたであろう大きな金庫が鎮座している。

最近その金庫の話を聞きつけたあるテレビ局が、家に取材に来る事になった。
番組の企画で「お屋敷の金庫見せてください」というものだ。
それは日本各地のお屋敷にある、開けられなくなった金庫の中を確認するという内容だ。

家にあるその金庫はもはや誰にも開けられないらしく、祖父が亡くなってからは誰も中を見る事が出来なかった。
父は、祖父や先祖が残した物を以前から確認したかったということで、渡りに船だった。

取材当日になり、僕、父、母、祖母、祖父に仕えていた元番頭さん、父の知り合いの骨董商が集まっていた。
レポーター役のタレントとテレビスタッフ、そしてどんな金庫も開けられるという鍵師が金庫のある和室に会した。
全員がお互いに挨拶を済ませると早速番組の収録が始まった。

タレントは番組を盛り上げようとレポートを始めた。
金庫の上には大小の様々な招き猫、色は白、赤、金…、合わせて10数個置いて飾ってある。
「昔から夫は猫が好きだったみたい。」
「この家や財産はこの招き猫たちが守ってくれたんでしょうかね。」
そんな祖母とタレントの話が一通り終わると、いよいよ鍵師の出番となった。

鍵師はダイアルを一つずつ解読していく。
見るからに分厚いドアの中には羽根が4枚あり、その1枚目の文字は10分程で判明したが、それ以降は時間が少しかかるらしい。

その間にタレントは祖母に話を聞いていた。

「…そういえば招き猫を集めるようになって商売がうまくいくようになったような気がするわ。」
祖母は昔を思い出すように話を始めた。
タレントは父や番頭さんにも話を聞いていくが、それも次第に話題が尽きてきた。

2時間ほど経った頃だろうか、金庫のノブがガチャリと動く音がした。鍵師が開錠に成功した瞬間だった。
タレントはここぞとばかりに場を盛り上げようとしていた。

父が鍵師から交代して金庫のノブをひねると、ドアにできたわずかな隙間の中から妙な臭いが漏れてきた。
僕は鼻が詰まりやすい体質だが、それが何かの腐敗臭らしいことはわかった。
金庫のノブを握った父は、タレントの掛け声に合わせて、そのドアを開けた。
その瞬間、腐敗臭は部屋中に広がった。

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コメント(1)
  • おとうさん、上手いこと言ってる場合か?

    2021/06/21/23:04

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