写真を整理しようと思っただけだった。
スマホの容量が残り少ないという通知が、何日も前から出ていた。
旅行先で撮ったもの。食べ物。仕事で必要になって撮った書類。あとで見ようと思って保存したスクリーンショット。
消してもいい写真ばかりなのに、いざ整理しようとすると面倒で、ずっと放置していた。
休日の午後、ようやく重い腰を上げた。
ちょうど買い替え時でもあったので、今までより容量の大きい機種を購入した。
新しいスマホの初期設定を進めている途中で、
「クラウド上の写真をこの端末と同期しますか」
という表示が出た。
そういえば、最初にスマホへ替えた頃は、クラウドだの同期だのをよく分からないまま使っていた。
その後は写真を端末にしか残さなくなり、クラウドの写真同期もずっと切ったままだった。
昔の写真が多少残っているのかもしれない。
どうせなら、この機会にまとめて整理してしまおう。
そう思って、同期をオンにした。
しばらくすると、画面の下に表示が出た。
1,876項目を同期中
そんなにあっただろうか。
充電器につないだまましばらく放置しておいた。
夕方になってから写真アプリを開いた。
最初に気づいたのは、海だった。
見覚えのない海岸の写真が、何十枚も並んでいる。
青い海。
白い砂。
ヤシのような木。
その中に、知らない男が立っていた。
30代くらいだろうか。
日に焼けた肌に、白いシャツ。
隣には女性と、5歳くらいの女の子、それより小さな男の子。
4人とも笑っていた。
誰だ、これ。
前後にも同じ家族がいた。
誕生日。
食卓。
庭。
学校らしき建物の前。
犬を抱いている女の子。
クリスマスツリー。
何百枚とある。
写真に写った看板も、ケーキに書かれた文字も、日本語ではない。
それで思い出した。
初めて使っていた機種を中古屋に売ったことがある。
当時は今ほど、個人情報を意識していなかった。
写真と連絡先を消して、設定をいくつかリセットして、それで大丈夫だと思っていた。
あの端末が海外に流れたのだろうか。
もしアカウントが残ったままだったなら、
この家族があのスマホを使っていたのかもしれない。
少し気味は悪かったが、それ以上に妙な面白さがあった。
知らない家族の生活が、突然こちらのスマホに流れ込んできたのだ。



























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