これは高校生の頃
よく遊びに行っていた友達から聞いた話だ。
彼の家は川沿いに建っていた。
川幅は30メートルほど。用水路のような造りで、両岸には高いフェンスがあり、川底までは5〜6メートルある。
対岸からこちらへ来るには
橋まで100メートルほど歩いて渡るしかない。
つまり、もし対岸にいる誰かがこちらへ
向かって来るなら、一度声は遠ざかるはずだった。
彼の家の風呂場は、その川に面していた。
ある夜、彼が一人で風呂に入っていると
対岸から犬の鳴き声が聞こえてきた。
「ワオーン……。」
ひどく不格好な鳴き方だった。
「不細工な鳴き方だな」
そう思っただけで、気にも留めなかった。
体を洗っている間も鳴き続ける。
「ワオーン……。」
頭を洗い始めても、まだ聞こえる。
「ワオーン……。」
シャンプーを流している最中だった。
ふと、違和感を覚えた。
近い。
さっきより、明らかに近い。
でも、おかしい。
対岸からこちらへ来るには、橋まで移動しなければならない。
なら、一度は声が遠ざかるはずだ。
なのに、その鳴き声は距離を変えず、一直線にこちらへ近づいてくる。
「ワオーン。」
「ワオーン。」
「ワオーン。」
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