これは、二十年以上前に私が実際に体験した、嘘偽りのない話です。
当時、学生だった私は友人数人と一緒に熱海へ旅行に行っていました。
現地に到着し、民宿にチェックインした後、貫一お宮の像のあたりを散歩したり、海辺で遊んだりして過ごしました。
そして日が暮れ、辺りがすっかり暗くなった頃、もう一度夜の海辺を歩こうということになりました。
私は皆から少し離れ、海に少し突き出た場所から、海越しに見えるホテルを撮影しようと携帯電話(当時はガラケー)のカメラを起動しました。
ファインダー越しにホテルを捉えようとした、その時です。
突然、画面の中央から、黄色……いや、金色と言ったほうが近いでしょうか。一匹の蝶が羽をゆっくりと羽ばたかせながら浮かび上がってきたのです。
「えっ!?」
驚いて画面から目を離し、実際の景色を見ました。
しかし、そこには何もいません。
もう一度画面を見ると、蝶は変わらずそこにいます。
「何だ、これ……?」
私は珍しい現象だと思い、とっさにシャッターを押そうとしました。
ところが、何度押してもピントがまったく合わず、シャッターが切れません。
十数秒ほどでしょうか。
画面を見つめ続けていると、突然、その蝶が燃え始めたのです。
一瞬で全身が炎に包まれ、静かに燃え続けています。
頭の中は「?」でいっぱいでした。
それでも必死にシャッターを押し続けましたが、一度も撮影できません。
何度も現実の風景を確認しましたが、やはり蝶などどこにもいません。
そして、蝶が燃え始めて数秒後。
炎に包まれたまま、画面の中央へ吸い込まれるようにすっと消えてしまいました。
何が起きたのか理解できず、私はしばらくその場で立ち尽くしていました。
後から友人たちと合流し、青ざめた顔で出来事を話しましたが、当然、誰一人信じてはくれませんでした。
あれは人魂のようなものだったのでしょうか。
精霊だったのでしょうか。
それとも、当時の携帯電話にそんな奇妙な機能でもあったのでしょうか。
もちろん、そんなものが本当にあったとは思えません。
結局、あの日見たものが何だったのかは、二十年以上経った今でも分かりません。
ただ一つだけ確かなのは――
夜の海を背景に、金色の蝶が炎をまとって舞う光景は、不気味であると同時に、息を呑むほど美しかったということです。
























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