地元に“呪いの池”なんていう心霊スポットがありましたね・・・。まぁ、本当に単なる都市伝説的な噂話だと思っていたんです。あのときまでは・・・。
あれは僕が中学2年生の時でした。真夏の暑い日、部活を終えた僕は急いで帰宅していました。野球部の連中が集まって、一緒に夏祭りに行く予定を立てていたからです。
山の麓にある神社から山車が出て、屋台もそこそこに、田舎にしてはそれなりに賑わう祭りなんです。それこそディズニーのパレードじゃないんですけど、地元は“ド”が付くほどの田舎でしたから、そんな夏祭りでも一大イベントなわけで。大人から子供まで結構な人が楽しみにしていました。恥ずかしながら僕もその一人で・・・。
当日、僕は野球部の連中と夕方に合流して祭りを楽しみました。屋台であれこれ買ったり、同級生や先輩後輩に出くわして世間話したり、最後はちゃっちぃ花火を眺めて大いに楽しんだんです。祭りも終わり、さて帰ろうかというときでした。
「あのさ、これから心霊スポットに行かね?」
同級生の重田がそんな提案をしてきました。時計は21時を過ぎ。このとき集まっていたのは5人でそれに賛同したのは3人。僕ともう1人は帰ることにしました。
「本当は行きたかったんですけど、さすがにこれ以上遅くなると家に帰って怒られるから・・・」
そう言い残し、意気揚々に心霊スポットに向かう3人を見送って帰宅の途に着きました。
重田たちが向かって行ったのは地元で有名な“呪いの池”という心霊スポットです。夏祭りがあった神社の前の道をまっすぐ山の方向に向かって行くと峠道にぶつかるんですが、それをひたすら登っていくと1つ目のトンネルが見えてくる。それを通り抜け2つ目・・・3つ目のトンネルの手前に、今は潰れてしまった喫茶店があるんですが、そこに電話ボックスがポツンとある。その脇に小道が一本通っているんですが、その先に“呪いの池”と呼ばれる心霊スポットがあると言われている・・・。
“言われている”というのは、実際行った人間の話では「そんな池はない」そうです。これは僕の爺さんに聞いた話ですが、昔は確かにあったそうですが、高速道路を通す工事でトンネルを掘ったことにより、地下水の流れが変わったとかでどうやら水源が枯れたというのがこのあたりの定説らしく、今はそんな池はないということです。。
でも、無いという話がある一方でその池を“見た”という話もあるのも事実。まだそこが心霊スポットとして有名になる前の話です。いくつかある体験談とされる1つに、こんな話があります。4人の青年が当てもなくドライブをしていたときのこと。峠道を流していると例の電話ボックスに差し掛かったときに、電話ボックスの脇に女性を見かけた。こんな山奥に1人何をしているんだろう?そう思った4人は電話ボックスを過ぎたところに車を停めた。多少の下心もあったのでしょう。車を降りて向かってみるが、そこに女性の姿は見当たらない。あたりを探してみたものの、どこにもいない。男4人の姿を見て、どこかに隠れてしまったのか?そんなことを話していると、
ジリリリリリリン
ジリリリリリリン
と・・・電話ボックスの電話が鳴り始めた。恐る恐る電話を取ると、
「イケナイ・・・イケナイ・・・」
すすり泣く女性の声が聞こえた。電話を取った青年がそれを3人に伝えると、皆口々に悪戯電話だと笑った。そうして車に戻ろうと振り返る途中、脇道に先程の女性が立っており、こちらをじっ・・・と見ている。4人と目が合うと、一度手招きをしてスーッと脇道に姿を消していった。
まだ携帯電話もない時代です。どうやって電話を掛けたかはわからないが、恐らく誰かと結託して悪戯を仕掛けているのだろうとその女を追いかけることにした。「タチの悪い女の悪戯だ、捕まえていっちょ懲らしめてやるか」程度の気持ちだったでしょう。懐中電灯の持ち合わせは無かったものの、月明りを頼りに脇道を進んだ。草木を掛け分けながら進むと行き止まりには池・・・。
辺りは木々に覆われ漆黒の闇に包まれる中、水面にまん丸なお月様を映し波紋一つ立てることのない、まるで鏡のような池があったそうです。
それは思わず4人が見惚れる程に幻想的で美しかったといいます。それを眺めているとどこからともなく女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
「イケナイ・・・イケナイ・・・」
そうして気づくんです。対岸に先程の女性が立っていることに。
綺麗な顔立ちをした美しい長い黒髪の女性がこちらを見て「イケナイ・・・イケナイ・・・」と泣いている。どことなく生気のないこの世の者とは思えない女性に4人は少し恐怖を感じつつも、何が“いけない”のだと声をかける。すると女性は池を指さした。
4人はぎょっとした。その水面に映るはずの女性の姿は映っていない。さらに覗き込んだ4人のうち、1人の姿が同じく映っていなかった。4人が同時に女性に視線を移すと、そこにはもう誰もいなかった。
という、よくある話なんです。それでオチはというと、その4人のうち水面に姿が映っていなかった1人が後日亡くなった・・・というわけで。それで・・・亡くなった方の最後の言葉が「イケナイ」だったということでこの話は終わるんです。
長くなりましたけど、まぁいくつかそんな話が地元にはあるんですよね。
それで話が戻りますけど、夏祭りの翌週でした。週明けの部活に行くと重田の姿が無かったんです。重田について訊くと誰も知らないという。勉強はてんでダメなヤツでしたけど、運動と食うことがが命みたいなヤツでしたから、部活だって1日も休んだことのない重田が休むなんてと心配になった。と、同時に霊の心霊スポットに行ったことが、何か悪いことに繋がっているのでは?と不安が過った。
気になった僕は、一緒に行った2人に話を訊くことにしました。2人は大したことはなかったと前置きしたあとで、一通りの話を始めた。
『峠道を1時間近く登って、件の心霊スポットの入り口に辿り着いた。そこは電話ボックスとトンネル手前の電柱の街灯の明かりだけという不気味な場所。そんな雰囲気たっぷりな場所に、重田以外の2人は行ったことを後悔する程だったそうですが、重田だけは相変わらずテンションが高かったという。そんな重田はあちこちを見て回り、例の電話ボックスに入った。そして電話を取ると「もしもし?」と誰かと話す素振りを見せたといいます。
「うんうん・・・そう・・・そうそう。俺もいけない。俺もいけないから」
真剣な表情で誰かと話始めるので、2人はまさか・・・と恐ろしくなった。そんな2人の様子を見てか、重田はにっこりと笑って演技だったとお道化たそうです。結局、池に続く脇道を進んだものの行き止まりには何もなく、そのまま帰ってきた』
という話でした。


























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