私、妻、息子、娘の家族4人で、北海道のある湖に旅行に来た。山に囲まれ、夜には美しく鳥が鳴き、明け方には雲海も見えるような場所。厳島神社のように、湖面に浮かぶ鳥居が印象的だ。
「パパ、湖の近く散歩しよ」
「ああいいぞ。〇〇(妻)はどうする?」
「私は遅れていくね」
娘が寝ていたため、私と息子のふたりで湖の辺へ行った。そこには立て看板や100円でみれる望遠鏡などがあったり、水遊びもできたりして、とても充実していた。ただ気になったのは、私たち以外に観光客が一人もいない事だ。
私たちが水浴びをしている時、鳥居の真ん中に1人の女性が立っているのを見かけた。彼女は真っ白い服を着て、こちらを向いていた。
「パパ、あれなに?」
「ん…?んだあれ、彫刻じゃないか?ほら、現代アートってやつだ。」
「ふーん。ない方が綺麗だね笑」
息子が彫刻を指さし笑う。つられて私も笑う。たしかに美しい自然と鳥居の荘厳な景観の中に、あの不格好で殺風景な彫刻はあまりにもミスマッチだった。
そしたら妻が娘を抱えて、慌ててやってきた。
「大丈夫だった!?」
「大丈夫って、何が?」
「さっきあなたたちのすぐ隣に、ナイフを持った女がいたのよ!」
「いや、いなかったって」
「本当よ!白いワンピースを着ていて…」
最初はなんのことかわからなかったが、次第に嫁の言うその人物が、あの彫刻に似ていることに気がついた。
ふとそれを見た。相変わらずそれは湖面に立っていた。だが、鳥居の下から少し、こちらへ移動しているような気がした。
ホテルのスタッフに相談し、防犯カメラを確認してもらったが、誰もいなかった。その日の宿泊客は私たちだけのようだった。だから妻の勘違いということで、その日は泊まることになったんだ。
ただ、私たちは御札を貰った。どうにもこのホテルでは、恐ろしい心霊現象が頻発するらしい。そんな時、この御札を手に持つだけで霊が消える噂があるのだそうだ。
ーー
午前二時くらいの出来事。私たちは旅行の疲れもあり眠りこけていたのだが、突然娘が泣き出した。オムツを変えても、ミルクを飲ませても、抱っこしても、泣き止まない。妻と息子は熟睡し、うなされていた。
うぅ…ん…うん…あ…
そんな寝言が部屋中に響いていた。だが、違和感を感じる。明らかに、2人の量じゃないのだ。5人くらいの寝言が聞こえる。他の宿泊客は居ないはずなのに、だ。
私は咄嗟に妻を起こした。妻は寝ぼけた顔で「うるさいな。」といった。そして、こうも言った。
「なんかいる。」
妻はベランダを指さした。そこには夜中の暗闇の中で、真っ白い服の女が、こちらをじっと凝視し立っていた。女は目を見開き、頬が張り裂けそうなほど口角を上げていた。そして目が合った瞬間、硬直したように動けなくなった。
妻はまた眠りに落ちた。そして息子も妻も、みんなさらに大きな声でうなされだした。娘に至っては泣くと言うよりもはや悲鳴で、暴れていた。
私はそこで御札の存在を思い出した。だが体は動かない。
ちょうどその時だった。娘があまりに大きな声で泣くものだから、ホテルの人が注意しにやってきた。

























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