実家で飼っていた猫が死んだ。
モコって名前のメスの雑種、享年は推定21歳。
「最近、モコの調子が良くないのよ…」
そんな話を母から聞いて、お盆には家に帰るからあと半月頑張って…!と思っていた最中の連絡でした。
モコは幼稚園の時に私が拾ってきた野良猫で、小さい頃からずっと一緒。
就職して実家を離れても、帰ればべったり甘えてきて、寝る時も側を離れない。
アパートに帰るのが心苦しいくらい私に懐いてくれていた、本当に可愛い子でした。
連絡を受け取った時には呆然として、勤務中にも関わらず涙が溢れて止まらず周りに迷惑を掛けてしまい…あれは本当に申し訳ありませんでしたね。
お盆に実家に帰った時には、モコは既に骨壷の中。
モコの骨を見て、びっくりしました。
あの子ってば、骨だけになってもすっごく可愛かったんです。
話を聞くと、モコは死ぬその時まで私のベットに寝ていたんだとか。
何度居間に連れ戻してもヨタヨタしながらベットに戻るから、最後は母が私の部屋に布団を敷いてモコを見守っていたんだそうです。
モコが居なくなった家は普段よりも少し静かで、足元に付き纏ってくるフワフワが無いことも、寝る時にお腹に重石が乗ってこないのも、冷房寒いから布団に入れろって深夜に起こしてくるワガママお嬢様が居ないのも、すごく寂しかった。
実家で過ごす2日目の夜。
深夜にふと目を覚ますと、頭の上に気配を感じます。
「ああ、モコが入りたいのかな」といつものように布団を捲ろうとして、ハッとしました。
……そうです。もう、モコは居ないんです。
それに気づいたら私、なんだか嬉しくなっちゃって。
「お盆だし、もしかしたら帰ってきてくれたのかな?」
そう思いながら、ワクワクして頭上を見上げたんです。
……やっぱりそこに、何かがいます。
最初は、モコかと思いました。
けれど、違います。
頭が半分ほど潰れていて、口元にニンマリとした笑みを浮かべた、人のような”何か”が、私をじっと覗き込んでいたんです。
息が止まりました。体がまったく動きません。
思わず固まった私の耳に、ボソボソと小さな声が聞こえてきます。
「な…た、い…く…た、いなく…た、いなくなった、いなくなったいなくなったいなくなった!」
その”何か”は狂ったように「居なくなった」という言葉を繰り返します。
声はどんどん大きくなり、最後には鼓膜が破れそうなほどの叫びになって——
そして、突然、ぴたりと止まりました























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