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妖怪・風習・伝奇

君尋さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

可愛い愛猫
短編 2025/10/10 21:30 2,041view
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「……チッ」

舌打ちのあと、聞こえたんです。
懐かしい声が。

「まぁおーーん」
それは、モコの鳴き声でした。間違えるはずがありません。

ニンマリとしていた口元が不機嫌そうに歪むと、それは少し顔を近づけて

「またくるね」

次の瞬間、”何か”は霧のように消えました

次に目を覚ますと、朝でした。
夢?現実?と混乱しながら起き上がると、チリンと音を立てて何かが布団から転がり落ちます。

それは、モコの首輪でした。

寝る時には無かったその首輪を見ながら、あの出来事は実際にあった事なんだ、モコが私を守ってくれたんだ、と思いました。

それ以降、あの変な”何か”には遭遇していません。
ただ、モコをよく見かけるようになりました。

モコは視界の端をチラリと移動したり、夜になるとお腹に乗ってきたり、時には鳴き声も聞こえます。

モコが見守ってくれているんです。
たとえ幻でも、そばにいてくれるなら寂しくありません。
むしろ、幸せなんです。

実は、この間事故に遭ってしまって現在入院中なんですが、病院にもモコは着いてきてくれています。
夜になると、早く布団に入れろと催促してくるんです、可愛いでしょう?

私、大部屋に入院してるんですけど、同室のお婆さんに言われたんです。

「お婆ちゃんの与太話と思って、話半分で聞いてね。…あなた、猫が原因で事故にあってない?」

「あなたの…いわゆる守り神が、必死に化け猫を追い払ってるのが見えるんだけれど…」

ええ、その通りです。
私は赤信号を走っていったモコを追いかけて事故に遭いました…この場合、起こしてしまいました、が正しいんですかね?

けど、そんな事どうでも良いんです。
モコと一緒に居られるのなら、死んだとしても幸せです。

ね?モコもそう思うでしょ?

……ベッドの下から、小さく「まぁおん」と聞こえます。
モコも、同意見みたい。

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