俺たちが毎日行ってる小学校の近くには「分からないおじさん」がいる。
そのおじさんは毎日決まった時間に、魔法少女のイラストが描かれたシャツを着て、小学校近くの古びた建物の前で俯きながら、小声で「わからない、わからない、わからない」と呟いている。
そんなわからないおじさんの話を友達としながらいつも通り俺は下校していた。
すると、友達のうちの一人が驚いたような声で「あれわからないおじさんじゃない?」と言った。
それを聞いた俺は目を凝らして歩道の奥を見ていると、確かにそこには中年ぐらいのおっさんが魔法少女のイラストが描かれたシャツを着て、こちらに歩いているのが見えた。
恐らくわからないおじさんだと思い、俺は「別の道使って帰らない?」と提案したが、それを聞いた友達数人が「何?wお前ビビってんの?ww」と挑発してきたため、仕方なく今の道で帰ることにした。
近づいてくるわからないおじさんの足音は、どこか機械のようで、目には光がなく、生気のかけらもなかった。
そんな不気味なわからないおじさんと俺らが近づくにつれ、
「わからない、わからない、わからない」
という張り詰めた声が聞こえてきた。
俺はその声の不気味さを覚えていた、気づくと、わからないおじさんは目の前にいた。
すると、わからないおじさんは急に
「わかんねえええよおおおおお!何でお前らは俺の妻と娘を!」
と叫び、持っていたカバンからとても大きいナイフを取り出し、俺らに襲いかかってきた。
目の前で起こったことに怖気付いた俺らはすぐに、四方八方に散るかのようにわからないおじさんから必死に逃げた。
幸いにも俺は捕まることはなく、何とか逃げ切り、その足で警察署に行ってさっき起こった出来事を伝えた。
それから、警察署で母さんと合流し、何とか自宅に戻ることができ、翌日、あの出来事のせいで休校になった俺はLINEで皆んなが無事か確認したところ、誰もあいつに殺されてないことが分かった。
そのことに安堵していると母親が、俺にわからないおじさんが逮捕されて、なぜ俺らがあいつに殺されかけたのかを教えてくれた。
元々わからないおじさんは、妻と娘が居たが、20年前に自宅で一人の男の犯行により殺されてしまった。
一応、犯人は捕まったものの、その事がショックで精神を患ったわからないおじさんは、頭が狂い、いつも娘が誕生日に作り、渡してくれた魔法少女のイラストが描かれたシャツを着るようになり、引っ越した後も妻と娘と一緒に住んでいた古びた建物に行き、いつしか俺らの通っている小学校の生徒が妻と娘を殺したと思い、復讐を企てるようになって、今日が妻と娘が殺されて一年が経つと信じ込んだわからないおじさんは、一番その小学校の生徒が集まっているグループであった俺らを最初に殺そうとしていたらしい。
そんな話を聞き、俺は、あのとき捕まっていたら、きっと残酷な方法で殺されていた、そう思うと背筋が凍った。

























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