奇々怪々 お知らせ

心霊

有野優樹さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

眠れない理由
短編 2025/01/16 00:05 92view

筆者が二十歳頃、実家の自分の部屋で体験した話。

まだ暑さの残る九月、ぼくは体調を崩していた。
流行病ではなくただの風邪。少しのご飯を食べ、薬を飲んだらすぐに横になるという繰り返しにうんざりとしていた。
その日も夜ご飯を食べ薬を飲み、十九時か二十時あたりに布団に入った。具合が悪いとはいえ一日中横になっているので、いざ眠ろうとしてもなかなか寝付けない。
しかし、スマホをいじったりテレビを見たりとだらだら過ごしていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
ふと、目が覚める。
枕元には煌々と光を放つスマホが、寝落ちを証明するかのように取り残されていた。
カーテンの隙間から、目を背けたくなるくらいの朝日が差し込んでくる。
スマホの電源を落とそうと手を伸ばしかけたとき、怖さを、感じた。慣れた自分の部屋なのにも関わらず。
肘に力を入れ起きあがろうとするも、上から押さえつけられているかのように、まるで動けない。

体が動かない焦りと、慣れている部屋で感じる怖さに必死に抗っていたとき
「金縛りにあったときは怖がっちゃいけないらしいよ」
という根拠のない言葉を思い出した。
どこで聞いたのかもわからない。
しかし、体が動かない今、変えられるのは気持ちのみだ。
抗うのをやめ、好きな芸人さんのネタやテレビ番組を
「あのネタ面白いよね!あの番組を見たときのあそこのシーン面白かった!」
と友達に話しかけるように心の中で何度も何度も復唱した。
二段ベッドの下の段に寝ていたのだが、上の段の板は外されているため、二段目の枠組みだけが残され、白い天井が見えている。
視界の右側。薄汚れた白い壁から、目元が見えないくらいまで伸びている前髪を垂らしながら、誰かがぼくのことを見下ろしていた。

その人の黒い瞳は、ボールペンで点を打ったかのように小さく、二段目の枠組みに手をかけジッと、こちらを見ている。
それでもぼくは何度も、何度も、楽しい思い出を自分に語りかけ、この時間を終わることに意識を集中させていた。
すると女性の声で
「ワタシニ‥?」
と、聞こえてきた。
ぼくはそれを「わたしに向かって言ってるの?」と解釈してしまったので「違う!!!」と力強く否定をした。
言葉の勢いがあったからなのか、どんなに抗っても動かせなかった体を起き上がらせることができた。
力を抜いたあとにじわーっと広がる脱力感。
走ったあとに感じる心拍数の速さ。
再び寝るのは躊躇われたので、家族が活動を始めるまで起きていた。
怖さはあったのだが、そのあとは何事もなく眠りにつくことができた。
こんなことがあったあとでも、人は眠さには勝てないらしい。

1/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。