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妖怪・風習・伝奇

たちさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

有名な宿
短編 2024/12/15 22:03 1,337view
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小学生の時、転校生の佐藤君がやってきた。
紹介されてた様子を見ると、大人しそうな印象。
席は私の前で、簡単に挨拶をして着席した。
休み時間になると早速佐藤君の周りにみんな集まってきて、突然の質問攻めに少し戸惑いながらも答えている佐藤君の返答を聞いていた。
小学生だったのでみんな遠慮なしになんでも聞いていた。
「お父さんとお母さんは何してるの?」
「何が好き?」
「なんで引っ越してきたの?」

佐藤君の返答をざっくりまとめると、以前はI県に住んでいて、お母さんの実家に引っ越してきたらしい。兄弟は兄がいて、お父さんはいない。体育が好きで勉強はあまり好きではない。
あっという間に休み時間が終わり、みんな席に戻ったところで、後ろから、
「すごい聞かれたね。」と言うと、少しこちらを見ながら「うん。」と答えてきた。

体育が好きなだけあって、活発ですぐに周りのみんなと仲良くなっていった。
後ろの席の私とはことあるごとに会話をし、休み時間はすぐ教室を飛び出して一緒に遊んでいた。

ある日の下校中、

「お父さんはずっといないの?」と聞くと、佐藤君の様子が明らかに変わった。
「あっ、変なこと聞いちゃったかな…」と小学生ながらも2人の間に変な空気が流れているのがわかった。
「ごめん!言わなくていいよ。あっ、そういえば今日さ…」と違う話題にしようとしたら佐藤君が、
「お父さんさ、死んじゃったんだ。病気で。」と言ってきた。
「あ、そうだったんだ。」と言うと佐藤君はこちらを見て、
「誰にも言わないでね。2人だけの秘密。」と言いお父さんのことを話し始めた。
「I県に前いたでしょ。I県にある座敷童子が出る宿って知ってる?」と聞いてきた。
「あー、テレビで見たことある。」と言うと、
「そこに家族で泊まりに行ったことあるんだよ。結構前から予約して、ようやく泊まれる日がきたから家族全員で行って、宿に入るとおもちゃやお菓子がたくさん置いてあって驚いたんだ。」
私はテレビで見たことがあったので、
「テレビでも言ってたよ。何ヶ月待ちでしょ。すごいじゃん、そういう所に泊まれて!」と言い、佐藤君が羨ましかった。

「うん。すごい楽しみにしてたからさ、行った時はすごい楽しかったんだよ。けど…」
佐藤君の表情から明るさが消え、
「夜にさ、見たんだよ。」

私は、
「見た?えっ!座敷童子を?」と聞いた。
驚いている私のテンションとは逆に佐藤君は首を激しく横に振った。
「違う。何かわからない。座敷童子ではない!」と言ってきた。
「座敷童子じゃないんなら、なんだろう…」
と私は考えながら歩いていた。
「座敷童子が出る宿に泊まったんだよね?座敷童子以外で何かいる?」と尋ねた。
「わからない。僕も怖かったからずっと見てたわけではないんだ。」続けて、
「夜中に目が覚めてさ、そしたら音がしたんだ。廊下を歩く音が。ギシ、ギシって。僕は座敷童子だ!と思ってドキドキしながら布団に入ってたんだ。そしたら、障子がスッーと空いて部屋に入ってきたんだ。」
佐藤君の話を黙って聞いていた私は少し怖くなっていた。
「座敷童子だと思って布団の隙間から覗いたら、知らない男の人がお父さんの枕元に立ってたんだ。すぐにわかったよ。座敷童子じゃないって。僕は怖くて布団から出れないし、お父さんやお母さんを起こすこともできなかった。」
佐藤君は話を淡々と続けた。
「男の人がお父さんの顔を見下ろしていると、いきなりしゃがみこんで、寝ているお父さんの頭を横に振り始めたんだ。お父さんは全然起きなくて、男の人は笑いながら横に振り続けていたんだ。そして、突然頭を振るのをやめて、僕やお母さんが寝てる方をじーっと見て笑ったんだ。僕は怖くて目を閉じてそのまま寝ちゃったんだ。朝、起きたらお父さんは普通だったから僕は夢を見たんだと思って何も言わなかったんだ。だけど、それから何日かして、突然お父さんが死んじゃった…脳梗塞だって。僕は宿で見た男のせいだと思ってる。お父さんが死んだその日から。ずっと。あいつのせいでお父さんは死んだ。殺された。」
佐藤君は涙目になりながら話してくれた。
私は全く予想外の話を聞いて、何も返事をすることができなかった。

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