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呪い・祟り

kwaidanさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

憑魂
短編 2024/09/28 07:52 451view

これは、大学時代の友人Aから聞いた話だ。
彼の興味深い体験談で、聞いてからずっと心に引っかかっている。

Aがその体験をしたのは、ある夏の終わりのことだった。彼は、仲の良いBと、Cという少し変わった友人と一緒に、山奥にある古びた神社を訪れることになった。Cが「この神社には呪われた『箱』があるらしい」と話し、好奇心旺盛な彼らは、その噂を確かめに行こうということになったのだ。

神社は鬱蒼とした森の奥にあり、そこにたどり着くまで車で約3時間かかった。周囲は静まり返り、昼間なのにどこか薄暗い。不安を煽るような雰囲気が漂っていた。神社自体は小さく、古びてはいたが、どこか神聖な空気が残っていたという。けれど、その神聖さは本殿の奥に進むと次第に薄れ、代わりに強烈な違和感が胸を締め付けるようだった。

本殿の隅に、それはあった。古びた木箱で、箱の表面には無数の「釘」が打ち付けられていた。その釘はまるで何かを封じ込めるために打たれたかのようで、見ただけで息苦しくなるような光景だった。

突然、どこからともなく神主が現れ、彼らに近づいてきた。彼は穏やかな口調で「これは『憑魂(つきたま)』と呼ばれるものだ。この箱に打ち込まれた釘は、人々の悪しき感情や罪を封じ込める役割を持っている。しかし、決して箱を開けてはならない」と警告した。箱の中には、何が入っているのかは教えてくれなかった。

Cはその話に納得できず、夜になるとこっそり神社に忍び込んで、その箱の中身を確かめようと計画した。Aは反対したものの、結局BとCは夜中に神社へ戻り、箱に触れようとした。夜の森は一層不気味で、風が木々を揺らす音すら彼らの神経を逆撫でしていた。

二人は懐中電灯を片手に、本殿へ忍び込み、釘で封じられた箱の前に立った。Cは無言で工具を取り出し、釘を一本ずつ抜き始めた。最初は何も起こらなかった。しかし、次第に箱の中からかすかな音が聞こえ始めた。それは何かが箱の中でうごめく音で、次第にそれが低い呻き声へと変わっていった。まるで、何かが長い間封じ込められていたものが解放されるのを待っていたかのような不気味さだった。

すると突然、背後から低く響く声がした。「それ以上はやめろ」。神主がそこに立っていた。彼の顔は昼間とは打って変わり、真剣そのものだった。神主はゆっくりと二人に釘を元に戻すよう命じた。Cは恐る恐る抜いた釘を一本ずつ戻していったが、その手は震えていた。

その間、神主は静かに語り始めた。「この箱は『憑魂』と呼ばれ、人々の悪しき魂や罪深い感情を封じ込めるためのものだ。釘を打つことで、それらを封じ込めている。しかし、一度開けてしまえば、その魂は解放され、お前たちに憑くことになる。箱を開けた者は、二度と普通の生活には戻れないだろう」

Cはその言葉に青ざめ、完全に釘を戻すと黙ってその場を立ち去った。神主は二度とその箱に近づかないよう、そして、欲望や好奇心に流されないよう忠告した。

帰りの車内で、Cはまだ何か不満げな様子で「箱の中身が気になる」とつぶやいたが、Aは冷たくそれを一蹴した。彼らが学んだのは一つだけだった――危険な好奇心は、取り返しのつかない結果を招くこともある、ということだ。

それ以来、AもBもCも、その神社に二度と近づくことはなかった。

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