いちにち、いちみり
投稿者:太山みせる (32)
その日、野村は某観光地に来ていた
妻がそこの有名な祭りを見たいというので、有給を取り、小学生の娘2人を連れて家族4人でやって来たのだ
夏の夜、大きな神輿を担いだ男たちの喧騒は迫力満点で、直に見なければ味わえない感動がある
夜の神輿ということで派手にライトアップされ、その華やかな姿に妻や娘たちは「凄い!」とはしゃぐ
妻子が祭りに見惚れる中、野村は家族がはぐれないか怪我をしないか、そのことばかり気にしていた
強面といわれる野村が、2メートル近いゴツい体を縮めて家族を守っている、そのギャップは見る者を微笑ましくさせた
お陰で妻子ほどは楽しめなかったが、3人が喜んでいるので彼は満足だった
祭りが終わり宿泊先のホテルへ向かっていると、ふいに肩を叩かれた
「え?」
振り返った先に、野村ほどではないが、これまた大きくて強面の男がいた
「……吉見!」
中学校の同級生だ
まさか遊びに行った観光地で会うとは!
「久し振りだな野村、唐突に申し訳ないが、積もる話もあるし、ちょっと話せないか?」
笑顔ではあったが、吉見は何だかやつれていた
野村こそ、吉見に聞きたいことがたくさんあった
※※※
妻子をホテルに送ってから戻ると、吉見は嬉しそうに手を振って迎えてくれた
「お前も祭りを見に来たのか?」
尋ねる野村に、
「違う、俺はこの付近に住んでいるんだ。通りかかっただけだ」
と吉見は意外なことを言った
「こんな所まで引っ越したのか?」
ここは地元からかなり遠い
(遠くに来たのは、やはりあの件と関係があるのか?)
「なぁ吉見、お前まだ色坂と…」
「後でな!」
野村の話を、吉見は短く鋭く遮った
「安全な店がある、そこの個室で話そう。絶対に迷惑は掛けないから信用してくれ」
安全な店って…と思いながらも野村は吉見について行った
ひきこまれた。
引き込まれました。
10ページもあったかと思うほどあっという間に読んでしまいました!怖かったです!
面白かった。展開がハラハラする。
すごかった。