「鼻唄」
僕が中学生の頃の話。
当時、僕は歩き通学だったのですが、時間短縮のため、路地道を使用することが少なからずありました。
路地道なので、遅い時間は薄暗いのですが、そんな時間でも人通りは思いのほか多いので、安心して通ることが出来ていました。
そんな路地道を使用して、7ヶ月ほどたった頃。
いつも通り部活を終え、路地道に入ろうと、左に曲がります。
ですがその日は、人通りが全くないんです。
しかも、日も短くなって来ているので、
薄暗い路地道はいつもより不気味に見える。
ですが、早く帰りたかったのと、正規ルートが工事中ということもあり、路地道を通らないと更に遠回りしないといけない。
僕は仕方なく、路地道に入る。
始めは少し気味が悪かったのですが、塀の上を歩く野良猫を見たり、どこかの家からかカレーの匂いがしてきて、段々と余計なことは考えなくなって行きました。
しかし、路地道を半分ほど歩いた時、
「ん〜♪ん〜んん〜♪」
どこからか、鼻唄のようなものが聞こえます。
始めはどこかの家から聞こえ来るのかと思っていたんですが、
歩いているうちに、段々とその鼻唄が近ずいて来るような気がして、すこし急ぎ足で進むのですが、鼻唄はどんどん近ずいてくる。
怖くなかった僕は、さっさと抜けてしまおうと、走り出そうとしていた時、前から人が歩いてきました。
僕がほっとすると同時に、鼻唄が少しづつ遠ざかって行きます。
この出来事があってから、人通りが少ない時は、この道を避けるようになりました。
ですが、人通りの多い時にこの道を通った時でも、鼻唄がたまに聞こえてくることがあるんです。
しかし僕以外の歩行者は、それに気づく様子はなく、何も聞こえないかのように平然としているんですね。
(周りの人には聞こえていないのか?)
しかし、鼻唄が聞こえてくるだけで、僕自身には、直接的な被害はなかったので、だんだん慣れてきたのもあり、人通りの少ない時でも、路地道を使用するようになってきたんです。
それから月日は流れ、12月に入った頃。事件はおこりました。
その日は部活が長引き、もう日も落ちかけている。
路地道の前で、僕は立ち止まる。
ここを通れば、日が落ちる前に家に帰れる。
しかし、路地道は薄暗く、人通りもない。あの時と同じで、どこか不気味な雰囲気を放っている。
ん〜♪んんん〜ん〜♪
何で主人公が狙われたんだろ