ミミズ人間
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/26
09:34
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『これは悪い夢だ』って、そう思った。
だって、ついさっきまで、友達の(マナミ)と長電話してたはずなんだもの。
恋バナでひとしきり盛り上がって、そのあと(マナミ)ったら、夜中だっていうのに、急に気持ち悪い話を聞かせてきて。
怖くなったから、電話切った後、部屋の電気を消さずに、you tubeでお笑い芸人の動画を聞きながら寝たはずだもの。
でも今、私はひとり、パジャマ姿でヘンな場所に立っていた。
重苦しい厚い雲に覆われた夜空を見上げている。
屋外だった。
視線を下げる。停電に見舞われたように真っ暗な街が、ひっそりと佇んでいた。
見覚えがあるような、ないような、特徴のない街並み。
家と家の間を、まっすぐ路地が続いている。
街灯だけが、不均等な間隔で灯っている。
車が走る音も、犬の鳴き声も、なにもしない。
死んだような静寂。
ホントに、
ホントに、ここ、
ホントに、ここ、どこ?
埃っぽい、生ぬるい風が吹いてきた。
生臭い。
魚屋の店先を通りかかった時に嗅いだような臭い。
あれ?
夢の中は臭いがしないって、聞いたことあるような。どうなんだっけ?
カンカンカンカン――
不意に、背後で甲高い音がした。
死ぬほどびっくりした。
胸が痛くなるほど、心拍数がはね上がる。
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kanaです。綿貫さんはいいお話いっぱい書いてますよね。素晴らしいです。
綿貫です。kana様、ありがとうございます。恐縮です。