ザイコウセイ
投稿者:綿貫 一 (31)
――さあ、みんな。面白い話をしようか?
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僕が子供の頃に通っていた、小学校の話だ。
そこはC県の片田舎にある、ごくありふれた、普通の小学校なんだけどね。
だけど、その学校では数年ごとに、「神隠し」が起こったんだ。
ある日、忽然と、児童の姿が消える。
それも決まって、校舎の中で。
周りはみんな、必死になってその子の行方を探すけど、見つからない。
消えた生徒は戻ってこない。
普通なら、誘拐や事故を疑うよね?
でも、違うんだ。
それはやっぱり、正しく「神隠し」だったんだよ。
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初めにそれが起こったのは、1989年の11月だった。
ちょうど、元号が昭和から平成に変わった年だね。
当時六年生のふたりの女の子。
仮にアカネちゃんとミドリちゃんにしようか。
ふたりは自分たちの教室で、放課後、残っておしゃべりをしていたんだって。
日が暮れてきたので、そろそろ帰ろうかという話になった。
仲良しのふたりは、揃って教室のある三階から、下駄箱のある昇降口まで歩いて行った。
靴を履き替えていた時、アカネちゃんが声を上げた。
「いっけない! 今日宿題が出てた算数のドリル、机の中に入れっぱなしだった」
「ここで待っててあげるから、早く取ってきなよ」
もう靴を履いてしまったミドリちゃんは、ちょっぴり不満げにそう言った。
「ごめんね、ちょっと行ってくるね」と、アカネちゃんは薄暗い校舎の中に、駆け足で戻っていく。
ミドリちゃんはしばらく昇降口で友だちの帰りを待った。
でも。
5分しても、10分しても、アカネちゃんは戻ってこない。
しびれを切らしたミドリちゃんは、自分も上履きに履き替えて、元いた教室に向かったんだ。
面白かった
なんか面白かったです。語り口が良かったです。