ケータイ忘れただけなのに
投稿者:綿貫 一 (31)
『あ、しまった! ケータイ忘れた!』
発車間際の電車に飛び乗り、ほっと一息ついたのも束の間、私は恐ろしい事実に気が付いて戦慄した。
カバンの中も、ポケットの中も、探したけれど見つからない。
それもそのはず、記憶の中には、部屋の充電器に繋げっぱなしになっているケータイの姿が浮かんでいる。
ケータイくんが突然自我に目覚めて、私の気が付かないうちに、気を効かせて、ひとりでにカバンに入っていてくれた――なんて、奇跡でも起きない限り、彼は今も部屋でひとり、お留守番をしていることだろう。
なんでよりによって、デートの待ち合わせに向かうって時に、ケータイを忘れてきてしまうんだろう。私のバカ、バカ、バカ!
原因はわかっている、慌てていたからだ。
昨夜、テンションが上がって、夜更かししたのが良くなかった。
寝坊して飛び起きて、大急ぎでシャワーを浴びて、ロングヘアにドライヤーを当てて無理やり乾かして。
高速で化粧して、着替えて、トイレに行って。
カバンをつかんで、部屋を飛び出して、駅まで全速力でダッシュして――
ほら、ケータイ忘れてる!
とりあえず、遅れそうなことを彼に連絡しなくっちゃ……って、そうだ! ケータイないんだった!
肌身離さず持ち歩くのが当たり前になっているから、こういう時に軽く混乱してしまう。
私は今、ケータイを持っていない。
だから、彼に連絡ができない。
――OK?
仕方ない、まずは目的の駅までスムーズに移動することに集中しよう。
今のうちに乗り換えを調べておこう……って、だから、ケータイがないから調べられないんだって!
自分の行動とケータイとが、あまりにも自然に結びついていて、恐ろしくなってしまう。
ふだん、どれだけケータイに頼りきった生活をしているか、ということだ。
今も、気持ちを落ち着けるために音楽でも聞こうと、無意識に手がケータイを探していた。
本当に恐ろしい……。
憔悴する私の耳に、車内アナウンスが聞こえてきた。
「ただいま、××駅で発生した人身事故の影響で、ダイヤに乱れが発生しております。
お客様には大変ご迷惑をおかけ致しますが――」
『ああもう! こんな時に限って!』
私は心の中で毒づいた。
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このオマージュを理解できる人はオッサンだと思う(笑)
はい、自分もですよ
2006年くらいにアニメ見てた人には懐かしい名前
((( ;゚Д゚)))なるほど