罪と罰の天秤(解説ver)
投稿者:rark (32)
こんにちは。そしてこんばんは。rarkです。
ここでは、以前投稿した、「罪と罰の天秤」が、取り上げていただいたYouTubeの方で、「難しい」「解説が欲しい」などの声が見られたので、少し解説をしていこうと思います。ネタバレを含みますので、先に「罪と罰の天秤」を読んでから、ご覧ください。
〜解説〜
先に言っておきますと、この話はシンプルな怖い話では無く、文章の中に隠されたものを読み取って、怖い話が成り立つ仕組みになっています。なので「きさらぎ駅」などの怪談というよりは、意味怖に近いものになっています。なので、普通の怪談に、意味怖を混ぜたもの。という形式の怖い話になっています。
まず、この話の大まかな内容は、
「旅行者が、自分の犯した罪(殺人)を、物語を使って、「僕」に遠回しに伝える。」
という流れになっています。
順を追って見ていきましょう。
まず、旅行者の話には三人の人物が出てきます。
「あなた」「もう一人の女」「裁判官」
の三人ですね。しかし、ここで注意して欲しいのは、この物語の「あなた」は、これを読んでいるあなたとは、全くの別人だと言うことです。しかし、この話では、「あなた」というワードを使うことで、それが読み手であるように意識させる。ということです。そして、そこからさらに、「この中の誰かが罪を犯している」
この話題に対して、一人の役職を「裁判官」(罪を裁く人)
にすることで誰かが罪を犯した。という対象者を「あなた」と「もう一人の女」に、絞り、裁判官を、対象者から離脱させる。まぁ、文章のトリックですね。
しかし、そうでは無く、罪を犯したという話題に対しての対象者は、二人では無く、
「あなた」「もう一人の人」「裁判官」
の、三人というわけです。つまり、この三人の中に罪を犯した人がいる。ということ。
旅行者の話では、罪を犯した人を決める。という裁判の場面を1の場面とし、何者かに襲撃され、地面に倒れ込んでいるという場面を2の場面とします。この二つは、一見違うように見えますが、しっかりと繋がっています。
旅行者の話の大まかな内容としては、
「まず、何者かに襲撃され、地面に倒れ込み、意識朦朧とする。そこで、罪を犯した人を決める、裁判の妄想。もしくは夢を見る。」
↓
目を覚まして、真実に気づく。
というのが、大まかな内容です。
先に真相を言っておくと、
2の場面襲撃にあった被害者は、1の、裁判の場面の中での、「あなた」そして、2の場面で「あなた」を殺した人物は、1の場面で言う、「裁判官」です。つまり、「あなた」を殺したのは、裁判官ということになります。
この答えは、1の場面の中にありますが、先程も言った通り、文章のトリックにより、犯人が裁判官であることをわかりにくくしているので、気づかなかった人も、多いのかも知れませんね。まず、「あなた」と「もう一人の女」の罪を、天秤に乗せる。という所ですが、その二人の罪をはかっても、吊り合ったままでしたね。これは、二人の罪は同じ重さ。つまり、二人とも罪を犯していない。ということなんです。
最初にも言った通り、罪を犯した。という対象者は、裁判官を含めた三人です。しかし、その後に天秤は、あなたの方が重くなってしまいました。しかし、それは、裁判官が天秤の真ん中を触った10秒後に傾きました。それは、
「裁判官があなたの罪を重くした」
ということです。旅行者の物語の最後の文章を思い出してください。
「周りの人を残して、この世を去る。それがあなたの罪であり、今の苦しみが、罰なのでしょう。」
つまり、「あなた」にこの世を去るという罪が課せられた。しかし、その罪を課せられたのは、「あなた」を殺した人物。そして、罪を重くしたのは、裁判官。ここで、二つの人物が一致するわけです。
裁判官=「あなたを殺した人物」ということなんです。
もちろん、その裁判で罪を認めれば、死刑(この世から去る)。つまり、罪を認めれば、そのまま「あなた」は、息を引き取っていた。ということなのですが、最後まで無罪を主張したことで、夢から覚め、今から死ぬまでの時間、苦しみ続ける。というのが、「あなたの罪に対しての、罰」だということです。
そして、最後に「あなた」は振り向き、自分を殺した人の顔を見ました。その顔は、おそらく夢の中で見たであろう、裁判官の顔でした。
だから「あなた」は、全てを理解し、「そういうことか。」と言う。
なるほど。
でも、難しですね。
意味怖を作るのって本当に難しいな。
難解すぎると捻くれまくった理屈でも「これが正しい答えだ」と押し通されると、作者ですら反論できなくなる。
とりあえずの正解手順として作者解説は必要と思った