霊感のない友達

　はっきり言って俺には霊感がある。老若男女問わずいろんな霊をときどき見かける。ある日のこと、友達（仮にAとする）の後ろに黒いモヤ（？）、影（？）のようなものがあるのに気づいた。

　Aが動くとそのモヤも同じだけ移動して常に一定の距離を保っている。Aに何気なく後ろを見るよう言ってみたけど特に反応はなし。Aは霊感がないのだろう。

　次の日学校で会うとそのモヤは少しだけAに近づいていた。次の日もまたその次の日も会う度にモヤとAとの距離が縮まっていることに気づいた。Aに最近体調が悪くなったか聞いたところ至って健康とのこと。何日か経って、なんとAとモヤが完全に重なってしまった。Aが黒いモヤに覆われて姿がほぼ見えなくなるほどだ。それでもAをはじめ他の人たちはこのことに気づいていない。改めて体調の確認をするけど変わらず問題はなしとのこと。

　しかし、その翌日からはAについてたモヤはなくなっていた。その日はたまたま学校のテストがあった。俺は可もなくふかもなくといったところで特別勉強ができるわけではない。だがAははっきり言ってバカだ。テストは赤点すれすれで進級もギリギリなくらいだ。そんなAが学年トップクラスになるくらいテストの点が高かった。最初はカンニングを疑われたけどその次のテストでも同様で流石にAを疑うものはなくなりすっかり優等生となった。

　それだけでなくAは運動能力もかなりよくなっていた。Aは野球部に入ってたけど試合には出られずいつも雑用ばかりやらされていた。それが今では試合で活躍するくらい強くなっていた。

　だけどAは笑わなくなった。正確には笑ってるように見えるけど目が笑っていない。笑ってる時、一瞬だけ真顔になるけどあんな冷酷な顔したAは見たことない。Aは確かにバカでいろいろと不器用だけどAの底抜けに楽しそうに笑う顔は好きだった。それがもう見れないのは寂しく思う。