今際の際
投稿者:竹倉 (9)
何かヒトコワのネタになるような話ってないかねぇ?
何て事をボヤいていたら、後輩のTが語り始めたんだよね。
Tは身長が180cm程あり、体重は本人曰く80kgソコソコ。
例えるならば格闘家のような風貌。
因みに顔もまぁイカつい上に、左上腕にチラッと梵字のタトゥーが見えたりするTの仕事は実は介護職であったりする。
もともとTは鳶職人であったんだけど、高所作業中に足場から転落して、どちらかだったかの足を折ったんだよね。
そして奥さんからは
「こんな危ない仕事を続けるなら離婚します!!」
と三行半を突き付けられたんだそうだ。
幸運にも骨折で済んだものの、間違えればあの世行きだからねぇ。
奥さんの気持ちも分かるってもんだ。
晴れて鳶職を引退し、紆余曲折はあったが、心機一転介護の業界に飛び込んだわけ。
「俺、この仕事向いてるみたいっスよ。」
そう言うTは実に楽しそうに仕事をしているし、収入は大幅減であっても奥さんは上機嫌とのこと。
「ただ、たまにやりきれなくなることも有るちゃあ…有りますよね。」
「この仕事は守秘義務があるんで、具体的には話せないんスけど……」
Tが働いている施設にKさんという男性が入居していたとそうだ。
Kさんは大正の二桁生まれで、若い頃は兵隊として戦地へ赴いていたのだとか。
寡黙で、頭はしっかりしてはいたらしいけど、大病を患って寝たきりになってしまった。
そのKさんを甲斐甲斐しく面会に来て世話をするのが奥さんなのだとか。Kさんより一回りほど若いらしい。
「奥さんはKさんと違って、すごく明るくて社交的なんスよ。この真逆の二人が、一体どこで知り合ったのか…」
Kさんは言葉は少ないものの、奥さんが来るとやはり喜ばしいようで表情は和らいでいたそうだ。
奥さんは奥さんで
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