私が小学生に入学したときの話です。
私が小学生になる年に、家族でその土地に引っ越してきました。
ちょうど入学式の時期だったので、すんなりと溶け込めましたし、
3歳年下の妹は、ちょうど幼稚園に入園だったので、問題ありませんでした。
しかし、3歳上の姉は4年生で、転校という形だったので、少し不安だったそうです。
とはいえ、同級生もクラス替えからの新学期でしたし、姉のおっとりした性格もあってか、
転校生というハンデもあまり感じず馴染めたようで、とくに支障はありませんでした。
(弟と妹は、新入学・新入園だったのに、私だけ転校になったのはずるい、と、ぼやいていたそうですが)
それぞれが環境に馴染み始め、友達も増えてきたころ。
帰宅した姉を見たとき、なんだか暗く見えることがありました。
『暗く見える』というのは、元気がないとかという意味ではなく、
顔色から手足、服まで、とにかく日陰に入っているように全身が色彩的に暗く見えるのです。
「どうしたの?」
と私が聞いても、
「何が?」
と、姉はキョトンとするだけです。
「暗くなってるよ」
「だから何が?」
「お姉ちゃんが暗いんだよ」
「なにいってんの? 意味わかんないんだけど」
と、押し問答のような会話が続き、
「もういいよ、わけわかんない」
と、姉が呆れて終わりました。
いま考えれば、もっと具体的に説明できればいいのですが、そのころはまだ私も小学1年生で、きちんと言語化できずに、暗い、暗い、を言うばかりでした。
でもしばらくすると、陰になっているような暗さも消えて、平常に戻りました。
しばらく何ごともなく過ぎたのですが、数日後、再び姉が暗く見えたのです。
前と同じように、私が「暗いよ」といい、姉が「なに言ってんの?」と、噛み合わない会話を繰り返していると、姉を見た妹が、
「お姉ちゃん、どうしたの、ホコリがいっぱいついてるよ」
と、いいながら、姉の体を手のひらで、ホコリを払うような仕草をするのです。
「もー、なんなの、ふたりとも」
姉はうるさそうに、2階の自室へ引き上げていきます。
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