後悔と…
投稿者:えんたーさんどまん (1)
俺の幼馴染である八潮という男には、霊感がある。
長い付き合いだが、それを知ったのはつい数年前のことだ。
それから今まで、オカルト好きな俺は、ちょいちょい八潮の厄介になることが遭った。
今回は、そんな八潮の姉・アイルさんの話を書こうと思う。
八潮は、両親と姉の4人家族だ。
姉とは4歳離れている。
一人っ子で鍵っ子だった俺は、マンモス団地の一室にある八潮家で、親の帰りを待たせてもらうことも多かった。
八潮と俺が小6くらいの頃だから、アイルさんはちょうど高1だったかな。
その頃から、アイルさんは素行の悪い友達と付き合い始め、学校をサボったり、朝帰りしたり、果ては万引きやら未成年飲酒やらで、八潮母が警察に呼び出されたりなんかもしていた。
八潮家に行くと、八潮母とアイルさんの取っ組み合い混じりの大喧嘩を目撃することも増え、なんとなく居づらくなった。
そんな中でも、八潮は素知らぬ顔でゲームに夢中になっていたのだが…。
ある日を堺に、家の中でアイルさんを見なくなった。
八潮に聞くと、コントローラー片手に「家出したらしい」と、他人事のように答えたので、こいつには感情というものがないのか…と怪しんだものだ。
そんな調子で、数ヶ月単位〜年単位の家出を繰り返し、当たり前のように高校も中退。
たまに会えば、その度に見た目も派手になっていき、最後の方は小悪魔agehaの表紙のようになっていた。
俺達が高1かそこらの年だったと思う。
アイルさんは、家出や派手な格好をぱったりと止め、突然実家に帰ってきたかと思うと、これまでの遅れを全て取り戻すが如く、あっという間に高卒認定や車の免許を取得し、就職までしたのだ。
これには、八潮も八潮家族も、俺までもが驚いた。
すっかり丸くなったアイルさんに何があったのかと尋ねるが、「このままじゃダメだと思っただけ」と素っ気なく答えるのみで、詳しくは誰にも教えてくれなかった。
そうこうして、俺達がキャンパスライフやらバイトやらなんだと忙しくしてるうちに、公務員のTHE優男のケイタさんと結婚。
今じゃ3人の子持ちでベテラン主婦だ。
先日、真夏の朝に子守り要員として呼び出され、そのまま八潮家に泊まっていく流れになった。
ケイタさんは翌日仕事があるので帰宅。
八潮両親も孫たちと早々に寝室に引っ込んだので、久しぶりに八潮姉弟と深酒をした。
そこで、夏の風物詩ともいえる怪談話をアイルさんに振ってみたところ、このような話を聞かせてもらった。
まず、アイルさんにも、八潮同様に霊感が備わっていた。
これに関しては、以前八潮から聞き及んでいたので、大して驚きはしなかった。
物心つく頃から見えていたので、それが日常化していて、違和感はなかったと。
「小学生になったくらいからかな?見えるものをそのまま口にすると、ママに怒られた。不思議に思ってたら、テレビで心霊特番とかやってて、そこで、ああ、私が見てるものってユウレイなんだって気付いたんだよね」
かなり酒が入っているにも関わらず、顔色ひとつ変えずに淡々と語る。
「色んな物が見えた。こんな霊が見えるとか、良くないことが起こるよ…とかって言うと、気味悪がられたり怒られたり…。家でも学校でも孤立した。で、もう口に出さない…親にも頼らないって決めて、そこから外に出ていく感じになったんだよね。…要するに、グレたんだわ(笑)」
小学生の頃から霊感を切る練習をしはじめ、中学になる頃には常に霊感スイッチをオフにできていたそうだ。
そして、二度と霊とは関わらずに生きようと決めた。
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