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不思議体験

リュウゼツランさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

六地蔵
短編 2023/01/31 23:58 2,989view
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うちの近所には六地蔵がある。
小学生の頃、登校班の待ち合わせ場所がその六地蔵前だった。
特に不気味とも思わなかったし、かと言ってお地蔵様を敬うような気持ちもなかった僕は、ただ「石の像が立っている」くらいの認識しかなかった。

小学三年になり、僕は学校でいじめられだした。
殴る蹴るではないけれど、軽い無視や仲間はずれみたいな、今考えると本当に大したことのない嫌がらせだったけど、当時の僕の世界は学校生活がほぼ全てで、そこで居場所を失くしたことは、十歳の僕にとって死刑宣告のようなものだった。

「学校に行きたくない」
そう母に言うと、「行きなさい」とだけ言って、僕がなんで行きたくないのかを訊いてもくれなかった。

味方がいない僕は、毎朝の登校班も憂鬱だった。
登校班の中にいじめを行うクラスメイトはいなかったけれど、それでも僕は他人は全て敵だと認識していたからだ。
関わりたくもないし、話したくもない。

次第に僕は無口になり、下を向いて歩くようになった。

いじめは徐々にエスカレートして、いじめグループはみんなの前で僕を中傷するようになった。誰も助けてはくれず、僕はただ下を向いていた。
次の日、僕は涙ながらに母へ訴えた。「いじめられている」と。息子の告白に対し母は「そんな理由で学校を休むなんて情けない。行きなさい」とだけ言った。
涙を拭きながら登校班の待ち合わせ場所へ向かう。

八時にはまだ少し早く、誰も来ていなかったので、六地蔵の前に体育座りをしてうずくまる。
誰も分かってくれない。家族でさえも味方になってくれない。

孤独感に押し潰されそうになった僕は、もう逃げてしまおうと思った。
幸いまだ誰も来ていないし、今日はこのまま学校に行かず、その辺をフラフラして時間を潰そうと。
思い立ったら心が軽くなった気がした。よし、どこへ行こうか。

でも、軽いのは気持ちだけで、身体は地面に押さえつけられているかのように重かった。

立ち上がれない。立ち上がれないどころか、身体を起こすことすらできない。
何が起きてるのか分からなかったけど、とにかく誰かに姿を見られる前に逃げなければと、焦る気持ちとは裏腹に、身体がびくともしない。

どれ位の間そうしていたのか、体育座りのまま汗だくになっている僕に、登校班の班長をやっている女子生徒が「大丈夫?」と声をかけてきた。
すると、さっきまでの金縛り? が嘘のように、軽々立ち上がることができた。
「うん……大丈夫」
僕は力が抜けた。なんというか、逃げたくても逃げられないことをどこかで悟ったからなのかもしれない

結局その日は学校に行った。
そしてまたいじめられた。
悔しくて、やっぱり来るんじゃなかったと思わずみんなの前で泣きそうになったけれど、担任の先生がその様子に気づき、放課後にいじめグループを呼び出し、注意したらしい。

次の日から嘘のようにいじめはなくなった。

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コメント(3)
  • お地蔵さんに感謝ですね。

    2023/02/01/00:40
  • お地蔵さんが上に乗ってたのかなるほど()

    2023/02/01/09:48
  • いい話

    2023/02/02/18:09

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