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呪い・祟り

リュウゼツランさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

恐怖体験
短編 2023/02/19 23:19 3,585view
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友達との間で怖い話を語り合うのがちょっとしたブームになっていた。

ただし、それにはひとつだけルールがあった。

「実際に起こった出来事に限る」

それだけだ。

そのルールはシンプルでありながら割と大きな縛りでもあって、俺は頭を悩ませていた。

何かネタはないかな。バッタリ幽霊とでも出会さないかな。

俺は怖い体験を求めて、幽霊スポットや深夜の学校に忍び込んだり、墓場で夜を明かしたりもしたけど、一向に怖い思いをすることはなかった。

しかし、ある日俺は金縛りを体験する。これは待ちに待った心霊現象だ! とテンションが上がりながらも身動きが取れない俺が寝ているベッドの脇では、ふたりの老人が言い合いしてる。

えええ、どういう状況だよこれ。でもめっちゃ面白い!

その後5分くらいで金縛りは解けて、老人も姿を消した。興奮した俺はすぐに友達に電話し、経緯を話すと、「すげーなんだよそれ」と喜んでくれた。

俺はもっとこんな経験がしたいと願ったけど、それから暫くの間、金縛りどころか霊障のひとつにも巡り合わない日々が続いた。

一方で、友達は会う度に恐怖体験を語った。それは幽霊に追いかけられたり、実家がある地方の伝承だったりと、バリエーションも豊富で、内心俺は嫉妬していた。

そして、俺は作り話を披露するようになる。

恐ろしい形相をした髪の長い女が俺を殺しに来る話や、旅行先で禁断の場所に立ち居入り、お坊さんに「凄い悪霊を憑けてきたね」と言われた話を面白おかしく話した。

友達は「マジかよ~」と言いながらも真剣に聞いてくれて、俺は自尊心が満たされるのを感じた。

自分の話に聞き入ってくれるとこんなにも気持ちいいのか。

俺の承認欲求は日に日に膨らんでいく。

でも友達は俺の作り話に慣れていく。というか、証拠のない妄想だけの話に飽きてくる。ワンパターンになりつつある自覚はあったし、正直新しい話を思いつかなくなってきていた。

作り話をすることに罪悪感を覚えなくなった頃、ネタが尽きてきた俺は自分の首を絞めた。はっきりと跡が残るまで絞め続けた俺は気を失ってしまい、危うくそのまま自分自身が幽霊になってしまうところだったけど、狙い通り首元には薄っすらとではあるものの手の跡が付いている。

スマホで写真を撮り、「霊に首を絞められた」とメッセージを添え友達に送る。

「これ手の向きおかしくね?」と指摘はあったものの、幽霊に襲われたことは信じてくれたみたいだった。

そこからも俺は試行錯誤を続ける。足首を握り跡をつけ「霊に掴まれた」、食事も睡眠も取らずわざと自分をやつれさせ「霊に取り憑かれたかもしれない」など、とにかく話題を作り出した。

そんな俺を心配した友達は「もうやめよう。怖い話すんの」と言った。

やめたくないと返した俺に「怖い話をすると霊が寄ってくるらしいからさ。少なくとも俺はもう話さないよ怖い話」と宥めるようなことを言う。

もしかしたら俺が作り話をしていることに気づいたのかも知れない。俺が自分を追い込んでいることに気づいたから……。

でも俺はやめなかった。

友達に創作話を語り続けた。聞く気がないなと感じると、長文のラインを送りつけた。相手が望んでいるかどうかなんて構うものか。俺が話したいんだ。

聞け。俺はこんなにもたくさんの恐怖体験談があるんだぞ。凄いだろ? 面白いだろ? こんなにも色々な経験をしてきた俺は羨ましいだろ? 

今、俺の目の前にはたくさんの霊がいる。これが現実なのか幻視なのか分からない。

でも構わない。

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